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第29話 国境沿いの基地×集いし秘密のメンバー


 スカイとセレスクロニクルに隔たる山脈『ホワイトベルト』。1年中雪で覆われたその山脈の中に位置する国境防衛基地【スカイ・ベルト】。国境沿いの基地とあって、国内の重要拠点となっている。

 イービルズで休養した後、何も聞かされず護送車みたいな厳重な馬車に乗せられ移動。窓もなく、2つの席と俺たちの荷物だけという殺風景な室内。人も俺とミラちゃんのみで、小さなランタンだけの光が照らす空間となった。

 でもミラちゃんと一緒だったからその程度の事は些細な事で、移動中は楽しく話をして過ごした。旅先とかの移動中の車内で話すのって、なんだか特別感があっていいよね。

 そして気が付いたら、ここにたどり着いていた。


 雪が降る山脈の近くとあり、めっちゃ寒い。イクシオンでの季節は春で桜が舞っているというのに、ここでは雪が舞っている。

 まったく逆の風情を感じながらも、寒さから逃げるように基地の中に入り、ミラちゃんに案内されるがままに奥へと進む。

 厳重な警備が敷かれた廊下を進み、建物の一番奥の部屋へ。札には司令長と書いてある。部屋の中はシンプルで、作業机に本棚があるのみ。窓もない殺風景な仕事部屋だ。

 ミラちゃんが何の変哲もない壁に触れると、数秒前まで存在しなかった扉が出現。その中はトンネル状になっていて、幅3メートル程度の広さの道がスッと伸びている。等間隔に置かれたランタンの光りが、白銀の壁を照らすが道の終わりがまるで見えない。

 方向的には、ホワイトベルト山脈の中に入っていくような形になっている。まさにトンネルの様に掘っていったのかな。

「はわぁ…なんだか秘密基地の入り口みたい」

「秘密基地ですよ。この防衛基地に所属している人でさえ、この場所の存在を知っているのはごく一部にすぎないらしいですよ。そんな所によく作れたものだと感心するばかりです。では行きましょうか」

 特に変わることの無い景色の中を歩き始めた。外に比べてもこの空間は程よく温かい。振り返れば扉は消滅しているし。流石秘密基地。ソワソワしてしまう。


「そういえばミラちゃんって、この組織に入ってどのくらいなの?」

「まだ1年ほどですかね。ヴァルフリート家の権限がアイリスお嬢様に移った時に、この組織の話を聞いて入ったという感じですよね。組織の創設にお嬢様の亡きご祖父様である、先々代の当主が関わったとか何とかで」

「そうなんだ!ヴァルフリート家って想像以上に凄いね。騎士団の創設にも、この組織の創設にも関わってるなんて。じゃあ先代当主のヴァルフリートさんの父親も組織メンバーなの?気まずくならない?」

「いえ。あの人はこの組織の存在も知らないようですので、心配無用ですよ。先代は自分の地位を守ることにのみ固執して、いとも簡単に他人を切り捨てる人でしたので、組織に関わらせるべきではないと判断して教えなかったようで。そもそもあの人、自分以外はどうでもいい主義なので入れなくて正解だと思いますね」

 素直なミラちゃんにここまで言わせるとは、話を聞く限り本当にヴァルフリートの父親っていい人柄ではなかったんだね。

 財力や権力があっても人柄も良くなくては組織に入れないって、なんとも秘密結社っぽくていい。俺も別に聖人君主と言うような良い性格ではないけども、ほどほどな性格であってよかった。だってもしダメな性格ならあの時点で…ね?想像しただけで恐ろしい。これだけまっすぐに育ったのも家族とミラちゃんのおかげだ。

「本当に先代の功績はミラちゃんをヴァルフリート家に引き入れた事くらいだね。まぁ…それがきっかけで再会できたと思えば感謝することだけど」

「そうですね。どういう思惑があれ結果として、今こうしてアナタの隣を歩けているのですから最低限度の感謝はしても損はありませんね。ここまで来て、何か不安な事はありませんか?全くなさそうですけど念のため」

「ないよ~。離れていても心が繋がっている大切な人の隣にいる…こんなにも心強い事はないね」

「フフフ、エドガー君らしい。では…いきましょうか」

「ふぇ!?」

 刹那、目に前に扉が出現した。

 隠匿魔法か幻惑魔法?全然気づかなかった。念入りに何重にも魔法を張って、敵から察知されないようにしているわけか。

 いったいどんな秘密が待ち受けているのか。不安はないけど、心のざわめきが少しずつ広がっていく。俺の知りたい真実に、近付けているような気がする。


 扉の先は、ロビーにみたいになっていた。ぱっと見に広さは騎士団本部とそう大差ない。いくつかの扉や部屋が見える。山の中を掘っているのに、よくこんなものが作られたものだ。

 受付の人にミラちゃんが声をかけて奥に進む。一番奥、3メートルくらいの立派な扉が姿を見せた。スカイ国の国旗が彫られていて、荘厳な雰囲気が醸し出されている。

 そして感じる。この奥から桁違いの気配が複数。決して重々しい雰囲気とかではないのだが、圧倒されるような強さが扉越しにも伝わってくる。

 そんな扉をミラちゃんがノックし『スターリースカイ君をお連れしました』と声をかけると。

「了解。入っていいよー」

 聞こえてきたのはフリューゲルさんの声。いつもと変わらず優しい声色だ。

「失礼します」

 扉は開かれ中へと諭され入ると、部屋の中央に置かれた円卓に座る8人が一斉に俺を見た。

 その視線の強さだけでも、一気に空気が変わった。全員から放たれる強者のオーラというか、歴戦の経験からなる風格とでもいうのか。自然と背筋が伸びる思いだ。

 半分は知った顔だけど、あとは知らない人たち。でも全員悪い人ではないというのだけはわかる。

 知っているメンツは─。


 第三騎士団副隊長『ニック・フリューゲル』。

 第三騎士団補佐官『ロジャー・シュヴァルツ』。

 ヴァルフリート家当主『アイリス・ヴァルフリート』。

 メテウス家当主『ターニャ・メテウス』。


 豪華な顔ぶれだ。全員が穏やかな雰囲気けど、その目力はいつにも増している気がする。

 そして他の人に目を向ければ全員が、俺の事を見定めているように頭からつま先までを隈なく見ていた。こんなにも人から注目されて経験がないから、少し緊張してしまう。身なりはしっかりしてきてつもりだけど、大丈夫だろうか。不安だ…未来には全く不安はないのに、この人たちの反応が不安だ。


 2人の男女は、スカイ国の騎士の証であるライトグリーンの鎧を着ている。どっちも20代だろうけど、男性の方は少し年上っぽい。


 その隣に座るは、闇をも飲み込むほどの神々しい輝きを放つ白銀の鎧に、金色の装飾。貴族とはまた一線を画すような鮮やかさと、高貴な雰囲気の女性。


 そして一番奥。白銀とは裏腹に光を通さないような漆黒の鎧を纏った女性。血のような朱色のラインが入り、斧と鎖、その周りに竜が飛んでいる模様が刻まれている。スカイ国の国旗ではない。この特徴はどっかで見て、聞いたことがあるよう…。


「ほぉ…彼が例の?」

「良い目をしているね、少年。少しばかり華奢だけど、スピードタイプというなら問題ない」

「ブラッドからの報告によると…剣術や魔法も平均以上。飛行能力も高水準。弓矢の腕は最上級。メンタル少し壊れめの強め。人間性も問題なし。クーちゃん、今度デート…あいつはなんてことを書いてるんだ!!」

 報告書を見て、顔を赤くしているのがどうやら”クーちゃん”ことクレアさんのようだ。今の感じだと報告書にデートの誘いを書いてたみたいだけど、あの時しか見ていなかったのだけどブラッドさんならやっても仕方がないと思えてしまう。

 周りもなんか温かい目で見ながら微笑んでいるし。

「クレアさんとブラッド君は相変わらず仲がいいねぇ~。おじさんにはその若者の青春は眩しいぜ」

「おじさんとか若者とか言ってるが、まだ28で私らと6つしか違わないだろっ!それにあの馬鹿とはただの腐れ縁だ!」

「まったく姉妹揃って素直じゃないし、似てるね。素直じゃないのもまた青春らしい」

 言われた男の人は肩をすくめておどけて見せる。

 クレアさんは素直じゃないっぽいし、真面目につい読み上げてしまう少しおっちょこちょいな所があるね。ブラッドさんのあのニヤついた表情が、なぜか浮かんできた。きっとそう言う感じが好きなんだろうね。この人に似ている姉妹も少し気になる。

 というかブラッドさんの俺のメンタル評価、少し酷くない?『壊れめ』って。自分の体ごと射ったから強くは否定できないけど。

「スターリースカイ君、お疲れさん。今日は組織の幹部と顔合わせしてもらうかなと思って、呼ばさせてもらったよ。紹介していこう。まずさっき怒号を上げていたのが『クレア・ナマユナス』。俺やロジャー、こないだチラッとだけいたブラッドの同期だ。前は第三騎士団にいたけど今は第一騎士団副隊長だ」

「よろしく頼む。今さっきのは忘れろ。これは命令だ」

 蒼穹のような青髪。切りそろえられたボブカットから覗く薄紫の瞳は、少しの怒りと少しだけうれしそうなような様々な感情が入り乱れていて、頬は少しまだ赤い。

 そりゃデートとうっかりと言ってしまったら、恥ずかしくもなる。しかもみんなの前だし。

 副隊長。こんな感じだけど、発せられる覇気は相当なもので。ただ対面しているだけでもかなりの強者だと言うのが本能的にわからされる。


「で、隣に座ってる28の自称おじさんが『ユージーン・シュナイダー』。騎士団偵察部隊最高責任者にして四将の一人だ」

「四将?!」

「よろしくね~。君もスピードタイプなんだったね。俺もスピードには自信があるから今度一緒に鍛錬がてらに遊ぼうぜ」

 強者だとは思っていたけどスカイ国のトップ4とは。四将は一人いれば戦況を変えると言われているほどの特異点。まさかそんな人も組織に入っているなんて。


「じゃあ次。白銀の鎧を着ている人は…もしかしたら見たことがあるかもしれないね。『ティア・ステート・アトラス』─スカイ国の王女だ」

「王女?!」

 さっきと同じようなリアクションになってしまったが、許してほしい。王女ですか!?庶民が一生に一度会えるかどうかの王族ですよ!というか王様の娘さんですよ!!

 騎士団の上層部がいるのは何となく予想はできてた。フリューゲルさんもいる事だし。でも王族。それも王女ときたもんだ。雲の上の存在。この秘密結社、凄すぎないか?まさかそんな大御所がいるとは…というもう大御所しかいない。まずい、怖くなってきた。横にミラちゃんがいてくれなかったら気絶していたかもしれない。


 全員とミラちゃんを交互に見る。

「フフン、私を見て安心するならいくらでも見てください」

 なぜか嬉しそうなミラちゃん。よかった、ミラちゃんはいつも通りだ。めっちゃ安心する。

「ご紹介に預かりました。ティア・ステート・アトラス─スカイ国の王女です。以後、よろしくお願いします」

 ミラちゃんと同じくらい綺麗な深々としたお辞儀をしてくれた。流石王族、所作一つ一つが芸術の域のように美しい。もう色々と衝撃過ぎて、フラフラしてきた。立っているのがやっと。ここまで来ると逆にどんな衝撃的な事が来ても耐えられる気がしてきた。きっと錯覚だけど。

 ここまでのメンバーが揃っているなんてこの秘密結社は、一体どんな闇と戦っているのか。これだけの人たちがいるのにわざわざ秘密にしているなんて…その理由を考えるだけで恐ろしい。世界の闇に触れる…あれは大げさでも何でもないのかもしれない。

「そもそもなぜ王女様が?というか居て大丈夫なんですか?仕事とかは?」

「組織発足のきっかけの時に、現場にいたから彼女も入ってもらった」

「きっかけ、ですか?」

「それは追々話すとしよう。じゃあ最後…」

 そう言うと漆黒の鎧を纏った女性が立ち上がる。

 この状況を楽しんでいるのか、ヘルムから覗く表情はにこやかで。いたずらをする前の子供の様に無邪気。瞳の奥には確固たる意志が燃え上がり、発せられる覇気は重厚だ。


「こちら『ベアトリクス・アクエリアス』。【セレスクロニクル】の第一騎士団隊長にして四将の一人だ」



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