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第19話 奥の手と決着×終わらない因縁


 目に浮かんだのは、大切な人の笑顔だった。


(大丈夫、君がいるから絶対外さないよ)


 刹那、俺の横腹付近の背中から光輝く矢が刺さり、貫通。斬りかからんとしていたアルベルトにそのまま向かう。

 まるで星空をかける流星のような煌めきと、残光が戦場を照らす。

 ガードなどできるはずはなく、吸い込まれるように腹部に命中。ダークネス・オーラをも貫き、深く突き刺さり、奴の体を吹き飛ばす。

「ぐあはぁっ…?!」

 更に吹き飛ばされている奴の右肩と左足に、新たな矢が突き刺さる。

 目を見開き、何が起こったのか理解できていない表情をしながら、衝撃で地面を転がる。

 仰向けに倒れた奴の体から血が滴り、水に墨を零したかのように鮮血が広がり、大地を赤く染め上げる。闇は少しの間、蠢いていたが徐々に動きが鈍化。やがて動かなくなり、粒子となって消えた。オーラも完全に見えなくなり、マナも感じなくなった。

 決着はついた。

「狙い通…がはぁっ!!ごほっ!ごほっぁ!!」

 見届けた瞬間、鋭い痛みが襲ってくると共に不快感でせき込んで血を吐きだした。致命傷にならない程度に内臓は避けたつもりだったけど、穴が開いているのだ。血くらい出るか、なんて妙に冷静に考えられた。

 痛い。辛い。意識が朦朧とするくらい全身が痛い。気を失ってしまった方が何倍も楽だ。でもまだ終りじゃない。

 血を吐き、流しながら『奥の手』を手に取り、2つはアルベルトに突き付けながら進む。この雨の中では流れる血は生暖かくて、妙に肌に張り付いて気持ちが悪い。痛みの通りに結構出血しているみたいで、真下に水溜りみたいな血だまりができていく。

「なん、だ…それは…」

 息も絶え絶えに俺の顔と、宙に浮く『鮮やかなライトグリーンの光を放つ弓』を交互に見ながら聞いてきた。

 こんなもの見たことがないだろう。

 これが俺の命がけの奥の手。発現してから誰にも見せたことの無い、とっておきだ。


「ユニークスキル─【シューティングスターアロー】。マナで作り出された高出力の弓矢を生み出せる。誰にも見せたことのない…奥の手だ」


 親友であるライナーにも見せたことがない。誰にも秘密にしていた、とっておきの奥の手─【ユニークスキル】。俺にこの力が宿った日から、このラストアタックは考えていた。

「どこからアンタらにバレるかわからないから、誰にも悟られるわけにはいかなくて、この日のために隠してきた。戦う前からアンタの方は強いのはわかっていた。ファーストコンタクトでアンタの余裕を見て、これじゃないと仕留められないだろうと確信できた。ダークネス・オーラがわかっても、これなら突破できるとも信じていた。だから最初からあの一瞬…確実に俺を仕留める事が出来るタイミングで、アンタの気が緩んだあの瞬間をずっと狙っていた。おかげで、腹に穴が開いちまったよ」

「いったいどこに…なぜ俺は、気づけなかった」

「アンタからは死角になる位置でずっと“飛ばしてた”」

「飛ばしてた…だと?」

「一定の範囲内ならこの弓矢は自由自在に操れる。装填も発射も狙う場所の調節も…見えていなくとも感じれる。宙に浮かせてコントロールだってできる。この横腹の風穴も、自分の傷は致命傷にならないように狙ったんだ。流石俺。寸分の狂いもない」

 見せつけるように、空中に浮いている弓矢を自在に操ってみせた。最後に、維持が苦しいので一つに纏める。

 自画自賛してしまうほどに狙い通りだったけど、初めて自分に撃ってわかったのは、想像の倍以上痛い。正直意識が飛びそう。早くベッドで横になりたい。

 的に試したことは何度もあるけど、人に使うとこれほどまでの威力とは。血が止まらない。

「周りの連中の反応でバレたくなかったから煙幕と爆炎を使ったし、何よりも真正面からこいつを使ってもアンタは瞬時に警戒してチャンスがなくなると思ったんだ。どうやら正解だったみたいだな」

「なる、ほど…。腕を信じ、体に風穴を開ける…気が狂ったような戦術、だな」

「自分の体は、自分が一番わかっているから。…次は俺の番だ」

 死にそうだというのに、全てに納得したように少しだけ清々しい表情へと変わった。自分の今までの人生に悔いなどないかのように晴れやかで。それが本当に許せない。

「あの日の真実を教えろ。“力づく”でここまで辿り着いた。なんで俺の故郷を、家族を殺した…なんであんな目に合わなきゃいけなかった…答えろっ!!!お前みたいなやつがそんな晴れやかな顔で逝こうとするんじゃねぇっ!!!許さん…絶対に許…ゴボッ!ゲホッ!」

 雨音を切り裂いて、俺の声は戦場に木霊した。大声を出したから口から血が溢れた。倒れそうになるのをいつの間に駆け寄ってくれたライナーが支えてくれた。本当にいい奴だ。


 あの日、俺の家族の未来と生まれ故郷を奪った人間がのうのうとあの世に行こうとしている。何食わぬ顔で、天命を全うしたかのような晴れ晴れとした顔で。俺の家族やあの村の住人ができなかった表情で最期を迎えようとしている。

 怒りがこみあげてきて、今すぐにでもみんなの敵を討ちたいくらいだ。弓を構えている手は、力を入れすぎて震えていて、血がしたたり落ちて弓を彩る。戦っていた時よりも呼吸は荒く、今の方が殺気に満ちている気さえする。

 それを見てもアルベルトは笑っていた。むしろその怒りに見てた表情を見ているのが目的であったかのように嬉しそうに、満足げに笑った。

「何がおかしいっ!!!」

 俺の言葉に反応せず、笑ったまま視線を外し、空を見つめた。その様子は、まるで世界を救った英雄が最期を迎えるかの如く。

 絶望感、無力感に近い何か黒い感情が心を支配する。こいつには何を言っても無駄だ。人の皮を被った別の生き物だ。

「あの場所が、なんだか知っているか?」

「…はぁ?トロス村の事か?あそこはただの田舎の村だ。特別なことなんて─」


「【始まりの地】だ。あの憎き場所から全てが始まった」


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