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第40話:王宮文庫の試問

 誓文の欠頁けつぺいじをもう一枚手に入れるため、リリアーナとアルフレッドは、王宮文庫へと向かった。

 そこは、反魔法派の圧力が最も強い場所だった。王宮文庫の館長は、ライオネル侯爵の側近であり、彼らの訪問を快く思っていなかった。


「図書館の守護者? そんな怪しげな肩書きの者たちに、王宮の機密である書物を渡すわけにはいかない」


 館長は、そう言って、誓文の欠頁を渡すことを拒否した。

 アルフレッドは、宰相を辞任した後、宮廷での立場はなかった。


 だが、彼は、この状況を打破するため、公開討論を申し出た。

 壇上に上がる前、両者は暫定版の「中立宣言」に連署し、封緘棚の栓金は微熱を帯びて外れた。


「王宮文庫の書物を、私たちが安全に管理できることを、国民の皆さまの前で証明します」


 公開討論の場には、多くの人々が集まった。


 アルフレッドは、この図書館の三原則、すなわち「物語整合」「真名保護」「代償管理」について、熱心に語った。


「我々は、魔法を、知を独占するための道具とは考えていません。知は、すべての人々のためのものです。この三原則は、その知を、悪意ある者から守り、正しく導くためのものです」


 さらに、リリアーナは、壇上で、魔法の危険性を実演してみせた。

 彼女は、一つの古書から、小さな火の玉を具現化させた。火の玉は、一瞬にして、壇上の文書を灰に変えるほどの熱を持っていた。

 人々は、その光景に息をのんだ。


「このように、魔法は、使い方を間違えれば、危険なものにもなりうるのです」


 リリアーナは、そう言うと、火の玉を、静かに消滅させた。


「だからこそ、私たちは、知の管理を、ガラス張りにします。四半期ごとのレポート公開、外部有識者二名の監査、そして誤作動時の即時停止プロトコルを導入することで、知の管理をガラス張りにするというものです」


 この提案は、人々の心に深く響いた。


「知を独占しようとするのは、どちらだ!」

「図書館に、我々の知を託そう!」


 人々の声に、館長は、これ以上抵抗することはできなかった。彼は、世論の圧力と、アルフレッドたちの提案に、妥協点を見出すしかなかった。


「よかろう。ただし、条件付きだ。『臨時寄託状』として、返還期限を設ける。そして、引渡し前に、書物の『真正性検証の共同実験』を行うことを条件に、欠頁を渡そう」


 アルフレッドは、その条件を快諾し、二枚目の誓文の欠頁を手に入れた。

 検証により、三枚の欠頁の真正が一致することを確認した。この検証ログは、透明性監査の初回資料に組み込まれることになった。


 残るは、アルフレッドの母が残した、最後の欠頁けつぺいじだけだった。

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