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第36話:古書の守護者

 過去との決別を果たしたアルフレッドの心は、晴れやかな光に満ちていた。

 彼は、もはや復讐心に囚われることなく、リリアーナと共に、この図書館を、そしてこの世界を、未来へと導くという、新たな使命に身を捧げていた。


 彼らは、若い司書たちに、失われた魔法と知識を教えながら、図書館の再建に力を注いだ。

 リリアーナは、古書の修復技術を伝え、アルフレッドは、魔法を使って書庫を整理し、新たな知を集めていった。


 ある日の夕暮れ、再建作業を終えた二人は、図書館の屋根に上り、王都を見下ろしていた。


 かつて、この場所から見た王都は、権力と陰謀に満ちた、冷たい街だった。

 だが、今は、温かい光に満ちているように見えた。


「アルフレッド様。私たちが真実を公表したことで、この国は少しでも変わったでしょうか」


 リリアーナは、不安そうに尋ねた。


 アルフレッドは、短く頷いた。


「ああ。真実を知った人々は、もう権力者の言葉に惑わされることはない。そして、失われた魔法の知識を、再び求め始めている」


 彼は、リリアーナの手を握った。


「私たちは、この図書館の『古書の守護者』として、後世に知識を伝えていく使命を担う。君と私、そして若い司書たちが、この世界を、愛と叡智えいちに満ちた場所へと変えていくのだ」


 リリアーナは、アルフレッドの言葉に、胸が熱くなるのを感じた。


 彼女は、ただの貧乏貴族令嬢だった。

 だが、この図書館と、アルフレッドという存在が、彼女に、世界を変えることができるかもしれないという、大きな使命を与えてくれた。


 その時、図書館全体が、微かな光を放ち始めた。


 そして、書庫の奥、最も古い書架が並ぶ場所で、書物たちが一斉にざわめき、ページを自ら伏せていった。

 彼らが発するざわめきは、人々の声や、失われた魔法の呪文のように聞こえた。


 二人がその書架に近づくと、壁に、かつて図書館で行方を絶った司書の名の頭文字が、うっすらと浮かび上がっていた。


 それは、彼がこの図書館の守護者であったこと、そして、何かを伝えようとしているかのように見えた。


 だが、その声は、二人の耳には届かなかった。


 書物の声は、ただざわめくだけで、二人の問いかけには応えない。


 それは、この図書館に、まだ解き明かされていない、さらなる真実が眠っていることを示唆していた。

 知を巡る物語は、新たな核心へと向かおうとしていた。

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