第29話:目録再編
リリアーナとアルフレッドは、大閲覧室の復旧を終えると、次は目録の再編に取り掛かった。
かつては、ただ書物が並べられているだけだったこの図書館を、知の探求者にとって使いやすい場所へと変えていくのだ。
「アルフレッド様、この書架の配置は、少し変更しませんか?」
リリアーナは、古書の分類について、アルフレッドに提案した。
「魔法に関する書物と、歴史に関する書物を、分けて配置したいのです。そうすれば、探している本が見つけやすくなります」
アルフレッドは、彼女の提案に短く頷いた。
「良い考えだ。知識を求める者にとって、最も重要なのは、その知識に容易にアクセスできることだからな」
二人は、協力して図書館のレイアウトを考え直した。
リリアーナは、前世の図書館司書としての経験を活かし、「王立十類分類法」を考案した。
たとえば、「魔法史」「錬金術」「古典語(ルーメ語)」といった十の分類を作り、書物を整理していった。
アルフレッドは、その提案を、彼の持つ知恵と魔法の力で、現実のものとしていった。
たとえば、重い書架を動かす時、アルフレッドは、微かな魔法の力を使い、書架を軽々と持ち上げてみせた。
彼の魔法は、リリアーナの分類法を原理として具現化しており、書架は「魔法史」「錬金術」といった分類に応じて、自動的に正しい位置に移動していった。
「わあ……すごいですね!」
リリアーナは、彼の魔法を見るたびに、瞳を輝かせた。
彼の魔法は、人を傷つけるためのものではない。それは、失われた叡智を取り戻し、人々の暮らしを豊かにするための、温かい力だった。
二人は、図書館の再建作業を通して、さらに絆を深めていった。
寡黙な二人の間に、言葉は少なかったが、互いの存在を確かめ合い、静かな時間が流れていた。
だが、再建作業は、決して平坦なものではなかった。
かつての図書館は、多くの書物を失っていた。
ライオネル侯爵の陰謀によって、多くの貴重な書物が失われ、二人の手元に残されたのは、ごく一部の書物だけだった。
「失われた書物を探さなければ……」
リリアーナは、そう呟いた。
アルフレッドは、彼女の言葉に、短く頷いた。
「この図書館を、かつての栄華を取り戻すため、失われた書物を探し、新たな知を集めていこう」
彼らが再建するのは、ただの建物ではない。
それは、過去の叡智を取り戻し、未来へと繋ぐための、希望の場所だった。
二人は、図書館の再建に力を合わせ、穏やかで満ち足りた時間を過ごし始めていた。




