第28話:新たな始まり
宰相の座を辞任したアルフレッドと、彼に寄り添うリリアーナは、二人で図書館に戻ってきた。
かつて「呪われた場所」として忌み嫌われたその建物は、今や、二人にとって、人生をやり直すための新たな場所となっていた。
「ここに戻ってきましたね」
リリアーナは、図書館の扉を開けながら、静かに言った。
アルフレッドは、その言葉に短く頷いた。
「ああ。私は、この場所で、君と出会い、そして世界の真実を知った。こここそが、私の帰るべき場所だ」
彼らは、図書館の中へと足を踏み入れた。
そこは、ライオネル侯爵の私兵たちとの激戦の傷跡が残り、さらに荒れ果てていた。床は雨漏りで腐りかけ、書架は傾いている。
だが、リリアーナの瞳には、荒廃した様子ではなく、この場所に眠る無限の可能性が見えていた。
「この図書館は、もはや『呪われた場所』ではありません。世界の叡智を守るための聖域です」
リリアーナは、そう呟いた。
彼女の言葉に、アルフレッドは、かすかに微笑んだ。
彼は、かつて『パリンプセストの書』を前にして、リリアーナのひたむきな姿に心を惹かれた。そして今、彼は、彼女の言葉に、この場所を再建するという強い決意を固めた。
二人は、図書館の再建に優先順位をつけた。
まずは雨漏りを直し、建物を修復する。
次に、散乱した古書を救い、目録を再編する。
最後に、誰もが自由に知識を学べる閲覧室を完成させる。
それは、地道な作業だったが、二人にとっては、何よりも尊い時間だった。
作業の合間には、二人は、未来について語り合った。
「いつか、この図書館を、誰もが自由に知識を学べる場所にしたいですね」
リリアーナの言葉に、アルフレッドは頷いた。
「ああ。かつて失われた魔法の知識も、再びここで蘇らせよう」
彼らの愛は、ただの感情ではない。
それは、世界の真実を追求し、より良い未来を築くための、知と愛の結晶だった。
その日の夕方、大閲覧室の修復を終えた二人は、窓から差し込む夕陽を浴びていた。
「この図書館は、君と私の、新たな始まりの場所だ」
アルフレッドは、リリアーナの手を握りしめ、静かに言った。
リリアーナは、彼の言葉に、短く頷いた。
彼らが歩む道は、決して平坦ではないだろう。
だが、二人には、この図書館に眠る真実と、互いを信じる強い絆があった。
それは、かつて「呪われた場所」と呼ばれたこの図書館が、愛と希望に満ちた、新たな聖域となることを告げていた。




