第25話:勝利と犠牲
アルフレッドとライオネル侯爵、二つの力が激突し、その勝敗は一瞬にして決した。アルフレッドの共鳴詠唱によって生まれた新たな魔法は、ライオネル侯爵の権力と欲望が生み出した力を、まるで霧のように消滅させていった。
ライオネル侯爵は、宙に浮いたまま、信じられないという表情でアルフレッドを見つめていた。彼の体からは、光が失われ、ただの老人の姿に戻っていた。
「……貴様のような若造に、私が……!」
彼は、最後の力を振り絞って叫んだが、その声は虚しく響くだけだった。アルフレッドは、静かに手を下ろした。すると、ライオネル侯爵の体は、地面にゆっくりと降り立った。彼は、ただの年老いた男になっていた。
「あなたの悪事は、すべて公になる。そして、失われた魔法の真実も」
アルフレッドは、冷徹な声で言った。ライオネル侯爵は、絶望に打ちひしがれ、その場で膝をついた。彼が築き上げてきたすべてが、今、終わりを告げたのだ。
二人は、勝利を収めた。だが、その勝利の代償として、大きな犠牲を払うことになる。
ライオネル侯爵の最後の抵抗から、リリアーナを庇ったアルフレッドの腕から、一筋の血が流れていた。リリアーナは、その血を見て、顔を青くした。
「アルフレッド様! 大丈夫ですか……?」
彼女は、震える手で、彼の傷口を抑えようとした。アルフレッドは、かすかに微笑んだ。
「大丈夫だ。これくらい……」
だが、彼の顔は蒼白で、意識は朦朧としていた。リリアーナは、絶望的な気持ちで、その場に立ち尽くした。
その時、別荘の門が開き、数人の人影が現れた。それは、アルフレッドに協力していた、元騎士団員ディランや、若き官僚カイルたちだった。彼らは、二人の様子を見て、息をのんだ。ディランは、すぐにアルフレッドの傷口を確認し、手早く止血帯を巻いた。
「宰相閣下! しっかりしてください!」
リリアーナは、涙を流しながら、アルフレッドの傷口を抑え続けた。彼女の瞳には、勝利の喜びはなかった。愛する人を失うかもしれないという、深い悲しみと、恐怖だけが宿っていた。
アルフレッドは、リリアーナの顔を見つめ、静かに、だが、確かな声で言った。
「リリアーナ……真実は……君が、公にしてくれ……」
彼の言葉に、リリアーナは、激しく首を横に振った。
「嫌です! 私は、あなたと……!」
だが、アルフレッドの意識は、そこで途切れてしまった。
王都の片隅で、世界の真実をかけた激戦は、勝利という結果で幕を閉じた。だが、その代償として、アルフレッドは、その命を賭けることになってしまったのだ。




