第21話:愛の告白
絶体絶命の窮地に陥ったアルフレッドは、ライオネル侯爵の冷酷な言葉に、怒りと無力感で体が震えていた。
リリアーナの絶望した顔を見て、彼はすべてを諦めようかと思った。だが、その時、リリアーナは地面に落ちていた古書を拾い上げ、静かに顔を上げた。その瞳には、絶望ではなく、希望の光が宿っていた。
「諦めないでください、アルフレッド様」
リリアーナの声が、静かに響いた。アルフレッドは、驚いて彼女を見つめた。
「この本に、最後の叡智が記されていました。『絶望の淵にこそ、希望の光は宿る』と」
リリアーナの言葉は、アルフレッドの心を奮い立たせた。彼は、彼女の持つ芯の強さと、どんな時も希望を失わない心に、改めて惹かれていく。
「ライオネル侯爵。お前の企みは、すべてお見通しだ」
アルフレッドは、静かに、だが力強く言った。ライオネル侯爵は、不敵な笑みを浮かべた。
「強がるな、宰相。貴様は、私に逆らえない。この娘の命は、貴様の手に握られているのだ」
その言葉に、アルフレッドは、リリアーナを守るため、すべてを賭けることを決意した。
彼は、一歩前に出ると、ライオネル侯爵に告げた。
「私は、この娘を愛している。彼女の命と引き換えに、私のすべてを差し出そう」
アルフレッドの言葉に、ライオネル侯爵は驚いて目を見開いた。リリアーナもまた、彼の突然の告白に、息をのんだ。
「……愛している?」
ライオネル侯爵は、信じられないという表情で、アルフレッドを見つめた。
「権力も、名誉も、何もかもを失った貴様が、今さら愛などと……」
「そうだ。私は、この孤独な人生の中で、初めて心から愛する人に出会った。それが、リリアーナだ」
アルフレッドは、リリアーナを真っ直ぐに見つめ、その瞳に、深い愛情を込めた。それは、彼の孤独な人生に光を与えた、唯一の存在への真摯な思いだった。
「君の知識と、君の心が、私の心を救ってくれた。君がいなければ、私は、この闇の中で、ただ一人、朽ち果てていただろう」
アルフレッドの告白に、リリアーナの瞳から、涙が溢れた。彼女は、彼がどれだけ孤独だったかを知っていた。そして、その孤独な心に、自分が光を与えられていたことを知った。
その時、カイル・ハーグリーヴスが、アルフレッドの背中に向けた剣を鞘に収め、袖口を三度触れた。それは、二人の間で交わされた、事前の合図だった。
リリアーナは、その合図に気づき、アルフレッドが自分たちを救うための、最後の計画を実行していることを悟った。
「アルフレッド様……私も、あなたを愛しています」
リリアーナは、アルフレッドに駆け寄り、彼の胸に飛び込んだ。死の危機を前に、二人は互いの気持ちを確かめ合った。それは、権力や見栄、そして陰謀とは無縁の、純粋で、真実の愛だった。
ライオネル侯爵は、二人の姿を見て、嘲笑した。
「くだらん。愛などという、非科学的な感情に溺れて、貴様はすべてを失うのだ」
彼の嘲笑が響く中、リリアーナは、アルフレッドの告白に、ある決意を固めていた。
彼女は、自らが持つ知識をすべて使い、彼を救うための決断を下す。そして、その決断が、二人の運命を、そして世界の運命を変えることになる。
キャラクター紹介(第21話時点)
リリアーナ・ヴァリエール:貧乏貴族の令嬢。アルフレッドの愛の告白を受け、彼を守るための強い思いを抱く。自らの知識を使い、彼を救うための決断を下す。
アルフレッド・レノックス:若き宰相。絶体絶命の窮地で、リリアーナへの深い愛情を告白する。それは、彼の孤独な人生に光を与えた、唯一の存在への真摯な思いだった。
ライオネル侯爵:宮廷の重鎮。二人の愛を嘲笑し、彼らを追い詰める。だが、その愛が、彼の計算を狂わせる鍵となるとは知らなかった。
カイル・ハーグリーヴス:文書管理局に務める若き官僚。アルフレッドの忠実な協力者。




