第12話:黒幕の正体
『パリンプセストの書』に記された真実を知って以来、リリアーナとアルフレッドは、図書館にこもって今後の計画を練っていた。
彼らは、過去の事件の真相を公表し、魔法の力を独占しようとした者たちを断罪することを決意した。
しかし、そのためには、事件の黒幕を突き止め、決定的な証拠を掴む必要があった。
「『パリンプセストの書』には、ライオネル侯爵の名が記されていた。彼が主犯であることは間違いない」
アルフレッドは、ライオネル侯爵について語った。
「彼の目的は、権力欲を満たすこと。魔法の力を独占し、統制することで、この国のすべてを支配しようとしている」
「ですが、もう一人、関わっていた人物が……」
リリアーナは、書物に記されていた、アルフレッドの父の名を口にするのを躊躇った。
だが、アルフレッドは、短く頷いた。
「父は、宰相としての私の権力を強固にするため、ライオネル侯爵と手を組んだ。そう記されていたな」
彼の声は、悲しみを帯びていたが、もう絶望に打ちひしがれているわけではなかった。
リリアーナとの絆が、彼の心を強くしてくれたのだ。
「父は、すでに病で亡くなっている。だが、ライオネル侯爵は違う。彼を追い詰めることができれば、すべてを公にできる」
二人は、ライオネル侯爵の行動を、図書館に眠る古書の情報と照らし合わせていった。
すると、驚くべき事実が明らかになった。
「これは……ライオネル侯爵は、魔術師殺しが起きた後、魔法に関する書物をすべて買い漁っていたようです」
リリアーナは、古びた取引の記録を見つけ、声を上げた。
それは、宮廷の記録には残されていない、秘密の取引の記録だった。
「そして、この書物にも……」
アルフレッドは、別の古書に描かれた紋章に目を留めた。
それは、ライオネル侯爵の紋章に酷似していた。
書物の内容を読み解くと、そこには、魔法の力を独占し、新たな魔法の王国を築こうとする、彼の野望が記されていた。
「彼は、魔法を危険だと民衆に広めながら、裏では魔法の力を利用しようとしていたのだ」
アルフレッドの瞳が、怒りに燃えた。
彼は、ライオネル侯爵が、権力欲のために、多くの命を犠牲にしたことを確信した。
「そして、私の父も、その野望に加担した……」
彼は、再び悲しみに暮れそうになった。だが、リリアーナが、そっと彼の手に触れた。
「大丈夫です。あなたには、私がいます」
彼女の温かい言葉に、アルフレッドは、再び前を向くことができた。
二人は、ライオネル侯爵が、過去の事件だけでなく、アルフレッドの人生にも深く関わっていたことを突き止めた。
「この書物によると、彼は、アルフレッド様が『魔術師殺し』を追うよう、仕向けていたようです」
リリアーナの言葉に、アルフレッドは息をのんだ。
ライオネル侯爵は、アルフレッドの強い正義感を利用し、彼を権力の座に就かせ、都合のいいように操ろうとしていたのだ。
彼らが真実に近づけば近づくほど、ライオネル侯爵の陰謀が、どれほど深く、そして巧妙であったかが明らかになっていく。
「この真実を公表すれば、彼はすべてを失う」
アルフレッドは、短く言った。
その日の夕方、カイル・ハーグリーヴスという若き官僚が、図書館を訪れた。
彼は、アルフレッドに、宮廷内の状況を報告する際、几帳面な癖で、何度も自身の袖口を触っていた。
それは、二人の間で交わされた、秘密の合図だった。
だが、彼らが知らないところで、ライオネル侯爵は、すでに彼らの動きを察知していた。
そして、自らの陰謀が暴かれることを恐れ、静かに、そして確実に、反撃の準備を進めていた。
キャラクター紹介(第12話時点)
リリアーナ・ヴァリエール:
貧乏貴族の令嬢。アルフレッドと共に古書を読み解き、ライオネル侯爵が過去の事件の首謀者であることを突き止める。彼の陰謀の全貌を知り、アルフレッドを支える決意を固める。
アルフレッド・レノックス:
若き宰相。ライオネル侯爵が事件の首謀者であることを突き止め、深い怒りを抱く。彼が自身の父と繋がり、自分を操ろうとしていたことを知り、復讐を誓う。
ライオネル侯爵:
宮廷の重鎮の一人。過去の事件の首謀者。二人が真実に近づいていることを察知し、反撃を準備する。
カイル・ハーグリーヴス:
文書管理局に務める若き官僚。アルフレッドに忠誠を誓っている。




