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第11話:深まる絆

『パリンプセストの書』に記された真実が明らかになり、図書館は深い静寂に包まれた。

 リリアーナは、絶望に打ちひしがれるアルフレッドのそばに、静かに寄り添っていた。

 彼は、これまで信じてきたものが、すべて偽りだったと知った。

 そして、最も信頼していた家族が、忌まわしい事件の首謀者の一人だったという事実に、打ちのめされていた。


 リリアーナは、何も言葉をかけなかった。

 ただ、彼の膝にかけられた毛布を、そっと直した。


 アルフレッドは、その温かさに、ゆっくりと顔を上げた。

 彼の深い灰色の瞳は、悲しみと、行き場のない怒りで揺れていた。


「私は……一体、何のために……」


 彼は、この日のために生きてきた。

 大切な人を失った悲劇を二度と繰り返さないために、宰相として、すべてを賭けてきた。

 だが、その使命感の根底には、自分自身が信じていたものが、偽りだったという残酷な真実があった。


「アルフレッド様……」


 リリアーナは、彼の名を、初めて口にした。

 アルフレッドは、その響きに、僅かに身を震わせる。


「あなたは、真実を追い求めた。それだけは、偽りのないことです」


 リリアーナの言葉に、アルフレッドの表情が、少しだけ和らいだ。

 彼女は、彼がどれだけ苦しんできたかを知っていた。

 だからこそ、彼女は、彼を一人にしないと決めていた。


 リリアーナは、温かい紅茶を淹れ直し、湯気で冷えた彼の指先を温めた。


「この図書館で、あなたと過ごした時間は、私にとって、何よりも大切なものです。古書と向き合うあなたの姿、真実を追い求めるあなたの強さ……私は、あなたに惹かれていました」


 リリアーナの告白に、アルフレッドは驚いて目を見開いた。

 彼は、彼女のような純粋な心を持つ人間と、ここまで深く関わったことがなかった。


「リリアーナ……」


「私は、あなたと共に、この図書館を、そしてこの世界を、正しい姿に戻したい。それが、私たちの使命です」


 リリアーナの言葉は、アルフレッドの心の奥底に染み込んでいく。

 彼は、彼女の言葉と、その真っ直ぐな瞳に、深い救いを見出した。

 孤独な人生を歩んできた彼にとって、リリアーナは、彼の心の光だった。


 アルフレッドは、リリアーナの手を、しっかりと握りしめた。


「ありがとう。君がいてくれて、本当に良かった」


 そして、書庫の鍵束を彼女の手にそっと握らせた。

 それは、図書館の管理権を彼女に委ねる、彼なりの誓いの形だった。


 真実を共有したことで、リリアーナとアルフレッドの絆は、さらに深まった。

 お互いを唯一無二の存在として認識し始める。


 それは、権力や見栄、世間の評価とは無縁の、知と愛に満ちた、静かで確かな繋がりだった。

 二人は、この図書館を、世界の叡智を守る場所として、再建することを誓った。

 そして、その誓いは、彼らの新たな人生の始まりを告げていた。


 だが、真実が明らかになった今、彼らの平穏は、もはや保たれることはない。

 宮廷の影は、静かに、そして確実に、彼らに迫りつつあった。

キャラクター紹介(第11話時点)


リリアーナ・ヴァリエール:

貧乏貴族の令嬢。アルフレッドの苦しみに寄り添い、彼を支えようとする。自身の想いを告白し、彼と共に真実を追求していくことを決意する。


アルフレッド・レノックス:

若き宰相。家族の裏切りという真実を知り、絶望する。だが、リリアーナの優しさと告白に救われ、彼女を唯一無二の存在として認識する。


ライオネル侯爵:

宮廷の重鎮の一人。事件の首謀者。二人が真実に近づいていることを察し、彼らの動きを警戒している。

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