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TSエルフの冒険譚  作者: 巌沢雪乃
序章 開拓村
7/23

村での暮らし

 メインキャラを出したい欲に負けて七話から十話まで一挙公開します…!(七話)

「なあなあねーちゃん!追いかけっこしようよ!」

「ズルい!あたしとかくれんぼするの!」

「あはは…順番に遊びましょうね」


 村にやって来て十日ほども経てば、メグも子供達に随分と懐かれていた。

 最初こそは見知らぬ人であることや、自分達と少し違う見た目をしているという点から警戒されていたが、体力作りのためと村の中を走り回り始めたところで「ねーちゃんめっちゃ足速いじゃん!!」と大喜びで近寄って来た。

 子供達の対応をすることで大人達からの信頼も自然と集まっていき、今は目が合えば大半の人が挨拶をしてくれる。


 村は森に囲まれているため木材に困らず木造の家が立ち並んでいた。

 住民達はそれぞれ畑仕事や薪のための木こり、ちょっとした料理店を経営していたりと意外にも仕事は多そうであった。


 住民の総数は613人と意外と多く、あと数ヶ月もすればさらに一人増える予定らしい。


 ぼんやりと村を眺めていると、そんなメグに痺れを切らして一人の男児がグイッと袖を引っ張った。


「ねーちゃん!ほらぼくたちで捕まえるから逃げて!」

「……わかりました。今日も捕まりませんからね」

「ぐぬぬ、絶対捕まえるから!みんな行くよ!」


 随分と積極的な彼は現村長の息子でありエマ婆さんの孫でもあるエリックといい、つい最近九歳になったばかりの少年だ。


 メグが走り出すとエリックを中心とした15人の少年少女が後を追って来る。


 最初こそ大人達に怒られるのではないかと思っていたが大人からすればメグも子供であり、例え自分の横を通り過ぎたとしても咎められることはなかった。


「おう、メグちゃんじゃないか!今日もかけっこかい?」

「はい!」

「頑張れよ〜!」


 それどころかとんでもない速さで走り回るメグに気さくに声をかけてくれるほど寛容であった。

 ひらひらと手を振る男性にペコリと会釈をし横目に子供達の居場所を探る。

 馬鹿正直に背後を追う子供は一人もいない。


 本来であればこの広い村を縦横無尽に走り回れば子供達に追い付かれる道理などなく絶対に逃げ切ることができる。しかしこの村の子供達というのは随分頭が良いらしい。


「捕まえ…あぁ!」

「おっと」


 物陰から飛び出して来た女の子をヒラリと躱すと背後で何やら鈍い音が聞こえるも、きっとすぐに追いかけて来るので気にせず走る。

 大人気ないかと思われそうだが、初めの頃に子供達に合わせてゆっくりと走りわざと捕まったところ、主に男児のプライドを傷付けてしまったようで地団駄を踏みながら怒られてしまった。なので今はとにかく全力で逃げ回っている。


 オオカミに追われた時とは違い随分穏やかな気持ちではあるが先程のように唐突に現れるものだから以外にも神経を使う。


「あっちだ!みんな囲め!」


 エリックの声が響く。その号令に合わせ四方八方から子供達が現れた。

 囲まれたかと思い周りを見たが包囲網はかなり粗い。

 メグは誰も来ていない道を選び地を蹴る。まだ捕まることはなさそうだ、と考えながら建物を横切ろうとしたその時、陰から先程と同じ女の子が飛び出して来た。


「ほわっ!?」

「ふぎゅっ!?」


 油断し切っていたメグにそれを避ける余裕はなく正面から思い切り衝突した。

 ちょうど胸元に収まるようにぶつかった少女をできるだけ衝撃から守るようそのまま抱えゴロゴロと転がり民家の壁にぶつかる。


「いってて、ええと、ユノン大丈夫でしたか?」


 なかなかな衝撃に顔を顰める。どこかを怪我したような感覚はないが後で一応確認しなければ。

 下を向き胸に顔を埋める少女の栗色の前髪をかき分けるとまん丸とした瞳が覗く。


「お姉ちゃんいい匂いするねー!」


 メグの心配は杞憂だったようで、当の本人は呑気にフガフガと鼻息を立てて匂いを嗅いでいた。


「そうですか…」


 ユノンの頭に手を乗せ優しく撫でながらそのまま過ごしていると遅れてエリックを含めた他の子供達が集まって来た。


「あー!ユノンが捕まってる!」

「ズルい!」


 口々にヤジを飛ばす少年少女に苦笑してメグは立ち上がる。ユノンの服に付いた砂を払って自分に同じようにする。


「捕まってしまいましたね。勝者はユノンです」

「くっそぉ!!」


 男児達は地団駄を踏んで悔しがる一方女子達はと言うと、


「おねーちゃんわたしもつかまえて!」

「あたしも〜!」


 メグを囲むように群がっていた。今日も村は平和である。

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