第1章-06
「何言ってんだよ、やれって言っといて……おぉーい!あ、あんた!!もっとこっちに来いよ!こっちの横に階段がある!ここまで上がって来いよ!」
少女に呼びかけると、伝わったようだ。
囲みを切り抜けてこちらに走り出した。
それを追いかけようとする蜘蛛人間をことごとく撃ち倒していく。
【……めちゃくちゃ射撃上手いじゃん……なんだよ……】
脳内でボイスがなぜか不満そうな声を上げていたが、正直それほどの話でもなかった。
発射されているのは現実世界の弾丸じゃない。そもそも訓練も受けていない一般人の俺がいきなり本物の銃とか撃ったらたぶん反動で手を痛めてまともに撃てない。
敵に一直線に伸びていく光線。
その光線に撃ち倒されていく敵。
ゲームの中でしか見られなかった光景が眼前に広がっていた。
そう、つまり俺が”得意なあのゲーム”の感覚そのままで銃を撃ち、それが通用しているってだけだ。
それに、むしろ俺よりあの少女――
「いや、あの子のほうが……バケモンだろ……」
少女は指で方向を示し、俺に「援護射撃をさせる場所」を指示してきた。
そして彼女自身も木刀を振るい、蜘蛛人間を撃退していく。
その動きは人間離れした速度で――気を抜くと見とれて銃を撃つ手が止まってしまいそうだ。
少女が階段を駆け上がり、俺の場所まで到達した頃――すでに蜘蛛人間は一体残らず崩れさっていた。
「はぁ……はぁ……」
肩で息をしながら駆け寄ってきた少女は……真っ直ぐに俺を見つめ……そして――ボディブローを放ってきた。