第1章-12
剣道少女が不意に木刀に向かって意味不明の叫びを上げる。
……ヤバい?なんかサイコさんな子だったんだろうか?
しかし――その叫びに応えるように――少女が手にした木刀が震え始めた。
「あはは、ごめん。この子……木刀のくせに高所恐怖症なんだよね。でもこの状況ならたぶん、納得すると思う。だから、あたしにしっかりつかまって。あ、言っとくけど変な場所触ったらその場でポイするので――」
「え?いや……はぁ?ちょ、ちょっと……意味が100伝達してこないんだけど……」
「だから――あたしの腰あたりにつかまって――」
その時――唐突に――もの凄い――まるで地獄から響く怨嗟のような――魂まで揺さぶる――大声が響いた。
『ウォォォオオオオオオオオオオオオ――――――ッ!!』
そして――その叫びと共に――恐ろしい速さでハンターが迫ってくる。
もう――余計な事を考える余裕は俺には無かった。
「早く!!!」
何も分からないまま、無我夢中で少女の腰にしがみつく。
その瞬間、少女の身体がフワリと宙に浮き――柵を超え――闇夜に飲まれるようにして、俺達は落下していく。
「う……わ ……ぁああああああ!!!」
「ま、又三郎――っ!横へ!!」
ぐいん!とフックに引っかかるように少女と俺の身体が浮き上がる。




