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家族と過ごす朝

「う……」


顔に当たる光によって俺は目を覚ます。

その光は部屋に窓から差し込む太陽の光だった。


「また、あのときの夢か……」


まだぼやけている視界のなか、俺はベッドに仰向けになっていた体を起こす。


「もうあれから1ヶ月が経つのか……」


光が部屋に差し込む窓の外の景色を見ながら俺は呟く。

窓の外には、木造でつくられた家が何軒も建っており、早くも人が数人出歩いていた。

田舎ではよくあるような光景かもしれないが、違う点がある。

それはまるでRPGゲームで出てくるような村の雰囲気そのものであった。


「やっぱり夢……じゃないんだよな」


今でも時々思うことを改めて口にしながら、俺は記憶を振り返る。

ある日、ゲームをしていた部屋で謎の声を聞きながら光に包まれた俺はこの村の近くにある草原で目を覚ました。

周りは暗く、目を覚ました直後は混乱していた。

しかし、不思議なことに俺はその草原がどこなのかを知っていた。

それだけではなく、いまここにいる部屋も外にある村のことも知っていた。

いや、正しくはその記憶がなぜかあったのだ。

まるで別の記憶が頭に刻まれているかのように。


「俺の名前は賢上 真一」


俺は自分の名前を口にする。

しかし、俺は知っている。

それはこの世界での俺の名前ではないと。

そして、それを口にしたこの体は自分のものではないと。


「そして、この世界での俺の名前は……」


いま、俺が宿っているこの体の本当の持ち主の名前は……


「シン・フェレール」


そう、俺はこの体の持ち主、シン・フェレールという男に魂だけ乗り移ったのだった。


「あら、おはよう、シン」


先ほどまで、寝ていた部屋を出た先にある広い部屋に出ると、そこには女性が一人立っており俺に声をかけてきた。


「おはよう、母さん」


それは俺の……いや、シンの母であるセリスだった。

腰の長さまである水色の髪を下ろしており、若い顔つきをしている。

一言で言えば、超美人。

現にこの村でも大人の女性で一位の美貌を持つと言われているらしい。


「どうしたの?ぼーっとして」


その場で立ち尽くしていたら俺に、セリスは心配しそうな顔をして声を掛けてきた。


「い、いや、なんでもないよ」


いかん、つい見つめてしまっていた。

それぐらい綺麗な顔つきをしているのだ。


「そう?もう少しで朝食ができるから先に顔を洗ってきたら?」


「うん、わかった」


気を取り直して、俺は顔を洗うため洗面台のある部屋に向かう。

扉を開けた先には鏡があり、自身の顔が映る。


「相変わらずかっこいい顔してるなぁ……」


鏡には少し長めの黒髪で整った顔つきをしている好青年の顔が映っている。

正にイケメンで、俺の世界でこんな顔の男が歩いていたら女性から声をかけられたり、スカウトされたりするのではないだろうか。

その顔を見て、俺は改めて思う。

この顔も、体も俺のものではないのだと。


「本当、どうなってるんだろうな」


今の俺には二つの記憶が存在している。

一つはこの世界に来る前の本当の俺、賢生 真一としての記憶。

そして、もう一つがこの体の本当の持ち主、シン・フェレールの記憶だ。

あの日……謎の光に包まれた俺はこの世界にやってきた。

だが、目を覚ました時には、シンの体に俺の意識だけが移ったという状況だった。

つまり、俺の意識がシンの体を乗っ取ったといってもいいだろう。

意識は俺であり、器はシンのもの、というゲームでもなかった現状が今だ。

あとは名前が似ていたため、「シン」と呼ばれても違和感があまりないのは幸いだったかもしれない。

そんなことを考えながら、俺は洗面所の蛇口を捻って出てきた水を救い、顔を洗う。


「ふう……」


少し肌寒い気温のため水はやや冷たかった。

そして、側に置いてあったタオルで顔についた水滴を拭き取り、あらためて自分の顔を鏡で見る。

やはり、イケメンだった。


「……戻るか」


いつまでも洗面所にいるわけにもいかないので、洗面所を出た俺は部屋へと戻る。

部屋へ戻ると朝食の準備ができていたため、良い匂いが漂っている。

俺は朝食が並べられているテーブルに向かうと、そこには椅子が4つ置かれており、そこにはすでに男が一人と少女が一人座っていた。


「おはよう、父さん」


俺は男に声をかける。

すると、その言葉に反応して男は俺の方を見てきた。


「ああ、おはよう」


その男はシンの父、バンだった。

黒髪の短髪で、髭を生やしているが整っており、屈強な体つきで威厳がある雰囲気を持っている。

そして、これまた男らしい整った顔つきをしている。

この父親いてこそ、この息子ありというやつだろう。

そして父親に挨拶を交わしたあとは、もう一人、すでに席に座っていた少女にも目を配らせる。

すると少女はすでにこちらを見ていたため、目が合う形になった。


「おはよう、兄さん」


少女は俺に対して微笑みながら挨拶をしてきた。


「ああ。おはよう、アーニャ」


俺はその少女に対して、挨拶を返す。

少女の名前はアーニャ。

バンとセリスの娘であり、そして俺……いや、シンの妹だ。

セリスと同じ水色の髪で腰まである長さを一つに結んでポニーテールにしている。そして、とにかく可愛い。

大事なことだからもう一度言おう。とにかく可愛い。

雰囲気はセリスに似て、幼い顔つきをしており、背丈も175cmぐらいある俺に対して150cmほどだ。

もしロリコンがいたらヨダレを垂らしながら、誘拐するレベルかもしれない。

ちなみに俺は美人系より可愛い系の方が好きだったりするので、こんな可愛らしい子に毎日、兄さんと呼ばれたらどうなると思う?

もう、たまらないよね。


「兄さん?どうかしたの?」


「いや、なんでもない」


邪なことを考えていてぼーっとしていたので、アーニャに心配されてしまった。

大丈夫、俺はいたって正常のはず。


「よし、じゃあ全員揃ったことだし食べましょうか」


俺が席に座ると同じキッチンからセリスが来て席に座った。

そして、俺たちは手を合わせる。


「いただきます」


今日の朝食も美味しそうだ。

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