*第88話 むらさき
ルルナが平凡同好会とジャニス達に課した
挽回の手段は「平凡の友 臨時増刊号」にて、
王家の名誉回復の記事を掲載する事であった。
暴露記事を書いたセイシュール・ニャーゴロンは
碌な取材もせずに、出鱈目な事を書く
チンピラまがいのゴシップ記者で、
編集部もまんまと騙されたと言う事にした。
当人は編集部の追求を受けて逃走し、
現在は行方知れずとされた。
これに合わせて話題の新人小説家
ミュラー・サキ・シーキンズが談話を掲載した。
<セイシュールなる人物こそは、
さかしらに言葉を弄して政を語れども、
いと不束なりて誤り多く、甚だ徒らなり。
そのあだになりぬる人の果て、
いかでかはよく侍らむ。>
と散々にこき下ろした後で、打って変わって
オバルト王家を褒め讃えた。
盛大なマッチポンプである!
「あんた、恥ずかしくないの?」
「丸く収まるのならいいじゃん。」
「前世でも清少納言をディスってたわねぇ。」
「気に入らないのよね~あの女。」
当時の二人の立ち位置を例えるならば、
清少納言は学者肌のエッセイスト、
紫式部はネット小説家の様なものである。
どちらも本業は侍女であった。
仕事ぶりは清少納言に軍配が上がったようで、
何かに付けて比べられていた紫式部は、
彼女を目の敵にしていた様だ。
「あんた精霊でしょう?」
「そうですけど何か?」
京都の敵を異世界で討つ!
それはさておき、この増刊号にはもう一つ
特大のサービスページが設けられていた。
初めてルルナのグラビア写真が掲載されたのだ。
マジカルプリンセスのコスチュームで
ロイヤルムーンステッキを片手に、
様々なポーズを、色々な角度から、
エロエロな演出で爆撮!
売れた~
売れました~
重版につぐ重版!
徹夜続きで印刷所の職員が倒れるほど売れた。
売り上げカッポリでニンマリ!
王家も名誉回復でニッコリ!
いや~良かった良かった~
「はぁ~」
なのにジャニスはメランコリ~
どうしたのだろう?
最近は溜息ばかりをつく。
「何をたそがれてるのよ~」
「何でも無いわよ。」
「何でも無いわけ無いでしょう?」
「うるさいわね~」
「やっぱりあれでしょう?」
「何よ。」
「ク・ラ・ウ・ス」
「!」
「ほらぁ~赤くなった~!」
「なって無いわよっ!」
なってるよん!
なんだぁ~そうかぁ~
惚れちゃったのかぁ~
他人の空似だと分かった後、
改めて挨拶をして一緒にお茶を楽しんだ。
なるほど別人だ。
以来、時々ティータイムを一緒に過ごしている。
優しい眼差しに鼓動が高鳴る。
良く通る声が心地よい。
「ジャニス殿は王都の精霊院に通うのかな?」
「は、はい~そうだと思います~」
「では同級生になるね。」
「はい~」
「楽しみだね。」
「はい~」
「ふふっ!可愛いね。」
「か、か、揶揄わないで下さい~」
いやぁ~はずかしおすえ~~~




