*第86話 持つべきは友
「だから言ったじゃないの!どうすんのよぉ!」
ビビりましたぁ~!
精霊王からの呼び出し~!
すぐに来いってよぉ~!
例の記事の件だよきっと~!
「ミサぴょんが大丈夫って言ったから~」
「ミサぴょんって誰よ!」
「平凡の友の編集長。先輩精霊の。」
「ぜんぜん大丈夫じゃ無いじゃん!」
王都の中央教会も、さすがに相手が精霊王では庇いきれ無い。
なんせ信仰の対象である精霊の長である。
ルルナが白だと言えばカラスでも白鳥になる。
この世界で最高の権威を有する存在。
それがルルナなのだ。
決してエルサーシアのお守役では無い!
無い筈だ・・・
「胃が痛い~
病気だからいけませ~んって
駄目だよねぇ~やっぱり・・・」
こんな時には人脈を頼るのが一番!
***
「なんや~こんな朝早うに~
まだ薄暗いやんけぇ~
眠た~~~」
普通なら約束も無くこんな時間に取り次いでは呉れないのだが、
ジャニスも新米とは言え聖女だ。
追い返す訳にはいかない。
「お願い!助けてサナちゃん!友達でしょう?」
斯々云々と経緯を話す。
「見事な墓穴掘ったもんやのぉ~
二人で入っても余裕ちゃうんか?」
「入りとうおへんえ~」
「救うてたもれ~」
「しゃぁ~ないなぁ~。
一肌脱いだろかいな。
そやけど、相手がルルナ様やったらウチではアカンなぁ~
サラーラ様に頼んでみよか。」
「おたの申しますえ~」
「よしなに~」
夜明けと共にアルサラーラの一日は始まる。
まずは庭に出てラジオ体操だ。
レイサン家のお決まりである。
当然サナとトモエも参加する。
今日はジャニスと香子も一緒だ。
それから屋敷の外周をランニング。
汗を流してからの湯あみでサッパリ!
目もパッチリ!
法衣に着替えて教会で朝のお祈りをして、
参列者に”祝福の飴ちゃん”を配る。
サラアーミアは元来サービス精神が旺盛なので一個ずつ手渡しで配る。
これが大好評なのだ!
エルサーシアはハトの餌やりの様にばら撒く。
数も適当に鷲掴みにしてバラバラ~っと
放り投げて、さっさと帰ってしまう。
それでも有難がって拾っていたものだ。
だから娘達が丁寧に配るようになると、
感激の余りに泣き崩れる者が続出した。
「あぁ~聖女様!有難や有難や~」
今日もまた、すすり泣く声が礼拝堂にこだまする。
「いやぁ~勉強になります~」
「貴方もちゃんと手渡した方が良くてよ。」
「はい~そうしますぅ~」
「では参りましょうかしらね。
お屋敷まで戻りましょう。」
「あぁ!聞いた事があります~
ゲートって言うのですよね?」
「えぇ、そうよ。お母様の魔法なの。」
「大聖女様にしか出来ないのですか?」
「アリーゼお姉様も最近出来るように
なったのだけれど、私はまだ無理ね。」
そうしてジャニスと香子は強力な助っ人を連れて
ルルナの待つモスクピルナスへと向かったのであった。




