*第8話 お久しぶりね
聖女と四天王のみが発動できる高度な魔法の一つに飛行魔法が有る。
人型である特級精霊との契約が必須となる。
地上付近を滑走する程度であれば上級精霊で充分だ。
特級精霊との契約には条件が在る。
人型精霊との共鳴が可能である事。
そして精霊言語が堪能である事。
精霊言語・・・
即ち『日本語』である。
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つくづく思いますの。
私にも”ゲート”が使えたらと。
お母様とルルナの”ラッキーペアー”でなければ発動しませんのよ。
共鳴のレベルに違いがあるそうですわ。
仕方がありませんわねぇ。
ですからこうして空を飛んでいますの。
ですが・・・
強烈に寒いですわぁ~~~
「だ、駄目!もう限界ですわ!」
「だから言ったのに!」
「アリーゼは飛ぶだけで精一杯だもんねぇ~」
えぇ、そうですわよ!
お母様みたいに温度調節までは出来ませんわよ!
悪かったわね未熟でっ!
「と、とにかく降りますわよ!」
コイントの空がこんなに寒いとは知りませんでしたわ!
地上に降りたらルルナのお説教タイムが始まりましたの・・・
「防寒装備しなさいと言いましたでしょう?」
「嫌ですわ!あんな不細工な恰好!」
「ダモンの伝統衣装ですよ!ご先祖様に失礼でしょう!」
「あぁ~もう!分かりましたわよ!御免なさい~~~~~っ!」
「はぁ~、とにかく急ぎますから、装備を整えて下さい。」
花も恥じらう乙女が、熊の毛皮で出来た猟師服なんて嫌ですわ!
頭も付いていますのよ!
ヘルメットみたいに被るとカパッと開いた口の中に顔が在りますの。
ぞっとしましたわ!
「ねぇハニー、恰好の良い防寒服を出して頂戴な!」
「はぁ~い!任せてぇ~」
ハニーが私の記憶データベースを検索して、
条件に合うものを具象化して呉れますのよ!
「ジャジャァ~ン!出来たぁ~!」
「こ、これは・・・」
潜水服ですわね・・・
海底人かしら?
確かに前世で模型を持っていましたわね。
カーマニョル兄弟の大気圧潜水服。
よりによって、これを・・・
「これを着ろと?」
「あったかいよぉ~!」
「やれば出来るじゃないの!」
「ありがと~ルルナ~!」
嫌がらせかしら?
泣きますわよ?
閉所恐怖症ですのよ?
まぁ、短時間なら我慢できますけれど。
「さぁ!時間が勿体ないから行きますよ!」
空飛ぶ潜水服なんて意味不明ですわ。
でも・・・暖かいですわね。
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谷がパニックですわ!
そりゃ~そうですわよね。
空から二柱の人型精霊と金属の化け物が降って来たのですから。
住民が遠巻きにして見ていますわ。
「シュコォ~、シュコォ~」
「放って置いても、あちらから来ますよ。」
「シュコォ~、シュコォ~」
「あっ!来たよぉ~村長みたいなのぉ~」
「あぁ、あの人で間違い無いですね。」
「シュコォ~、シュコォ~」
一人では脱げませんの・・・
「こ!こりゃ精霊王様でねすが!」
「お久しぶりね村長。」
ルルナは精霊王と呼ばれていますの。
「シュコォ~、シュコォ~」
「しうこそお越しけろますたぁ~」
「貴方に聞きたい事があるの。」
「何んだべか?」
「シュコシュコォ~シュコォ~」
汗でパンツがグショグショですわぁ~
い、息が詰まる・・・
「ケイコールさんは、お元気かしら?」
「な、な、なして?」
「シュコォ~シュコォ~」
あぁ・・・意識が・・・
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カーマニョル兄弟の大気圧潜水服
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