*第77話 クーデターでおます
「痛たっ!強い強い!もっと優しく!」
「やかましわぃ!優しぃしたら抜けんやろが!
マッサージしとるんちゃうぞっ!
だいたい太り過ぎなんじゃワレェ!」
めっちゃ狭い通路で体が挟まってしもて
前にも後ろにも行けん様なった、
ネイサンのおっさんのケツ押してますねん。
なんでこないなっとるか?ちゅうとやね。
ネイサンのおっさん・・・
もうネっさんでええわ。
ネっさんの独裁に反発した民衆に乗っかって、
国防大臣のスタン・フーセンたら言う奴と、
総務大臣のカーン・コッフィーたら言うおっさんが
軍をたらしこんで謀反を起こしよったんですわ。
ほいで大統領府と議事堂を占拠して、
臨時政府を立ち上げよったんですわ。
ちょうどウチらが孤児院の慰問で他の劇団員と
離れとる隙を突かれましてん。
人質に取られてしもたんですわ。
ヘタに攻撃して麗しのお嬢様方に怪我でもさしたら
えらいこってすさかい、
身動き取れんでどないしょぉ~か?
言うとったらネっさんが隠し通路あるて言うもんやさかい、
ほなちょっとウチが行ってきまっさ~
言うて・・・
ほいで今でっかいケツが目の前に在りまんねん。
屁ぇこいたら殺すどっ!
「前はスッと通れたのだけどね。」
「いつの話やねん!」
「いらぬ肉を切り落とせば良いであろ?」
「死んでまうわ!」
「が!頑張るからヤメテ!」
ブッ!
「やってまえ!」
「はいなぁ!」
「ぎゃぁ~~~!ヤメテ~~~!」
スポッ!
「抜けたぁ~~~!」
「抜けたぁ~!やあるかいっ!何食たんや?
どないしたらこんな臭い屁ぇ出るねん!」
アカン・・・目に染む・・・
涙出て来た・・・
トモエのアホ、実体化を解除して逃げよった!
「いやぁ、面目ない。」
「なんもかんもオドレが悪いんじゃぃ!
寝首掻かれよってからに!」
「君、男爵令嬢だよね?」
「そうや!それがどないしてん!」
「いや、もう少し・・・」
「なんや!」
「いや・・・なんでもない・・・」
それから先も細っそい細っそい地下道を
つっかえつっかえしながら進みましてん。
「こ、こっち向きなら・・・」
縦も横も一緒じゃ!
一本道なんやったら最初にそう言わんかい!
ほたらウチだけで行くねん!
道案内いらんがな!
すれ違いも出来やんわ!
便秘かっ!
ウチらは宿便かっ!
***
なんやもう、ず~っと怒ってたさかい、
のろからからですわ。
よろがわのみるのんれはららぶらぶですわ。
「この上が議事堂の大会議場だよ。」
なんでも議長席の演壇の下に穴あいとるそうですわ。
ペロッと板めくったら滑り台みたいになっとるんやて。
ほいでグルグル回って、ここへ出るっちゅうわけですな。
「ほな行ってくるさかい、ネっさんはここで待っときぃや。」
「いやいや、中の事は知らないだろう?私も行くよ。」
「あぁ~それもそやな~」
議事堂に連行されたんは確かなんやけど
何所に監禁されてるんかは知りまへんねやわ。
「大体の見当はつくよ。
あの人数を閉じ込めて見張るなら、
第二会議室あたりだ。」
「さよか、ほな行こか。」
「あぁ。」
「・・・」
「・・・」
「何しとんねん。」
「え?」
「先行かんかいな。」
「え?私が?」
「当たり前やろ!ウチ、スカートやぞ!」
「あぁ~」
護衛やっちゅうても正式には侍女やさかい、
一応、淑女の恰好してますねん。
乗馬服でも持って来といたら良かったですわ。
ネっさんが四つん這いで滑り台を登って
行きよりましたわ。
ほなウチも行きまひょかいな。
「うわぁ~~~~!」
「うぎゃぁ~~~!」
「シバクぞワレェ~!」




