*第73話 サナでおます
ウチの名前はサナ・カーミヤマン言いますねん。
一応、男爵家のお嬢様ですわ。
そやけど、お父ちゃんもお母ちゃんも
元々が平民やさかい、貴族っちゅうても
パチモンみたいなもんですわ。
ウチの家はレイサン家に仕えてますねん。
そうそう、聖女様の一族でっせ。
ホンマもんのお貴族様ですがな。
お母ちゃんはサーシア様の専属ですねん。
筆頭侍女ですわ。
疾走痴女ちゃいまっせ!
筆頭の侍女でおます。
そいで、ウチは~っちゅうとやね。
今年からサラーラ様の侍女さして貰ろてます。
ウチも転生者やさかいホンマは聖女なんやけど、
色々と大変そうやから内緒にしてますねん。
聖女の秘術を受けた聖人っちゅう事で
お役所には言うてありまんねやわ。
一応、礼儀作法とかも習ろてますねんけど、
なんや性に合わんのですわ。
別に出来やんでも怒られへんし、
その辺がレイサン家はゆるゆるですねん。
前世では武家の娘やったさかいに、
それなりに厳しゅうに育てられた筈ですねんけど、
ぜぇ~~~んぶ忘れましたわいなぁ。
覚えてるんは剣術と龍馬はんの事だけですわ。
あの浮気もん、ウチを放ったらかして京都に
行きよりましてん。
そいで女つくって結婚しくさりよったんですわ。
NTRですわ!
さっぱりワヤでっせ!
それ聞いた時はブチ殺したる思たんやけど、
ウチが殺る前に暗殺されよってからに。
形見や言うて置いて行った小袖を見てたら、
なんや憎めんようなってもたんですわ。
それからはずっと一人で生きて、
死ぬ時も一人でしたわ。
そやから今世では、思い切り恋しよ思て
ますねん!
浮気もんはあきまへん!
男も女も一途に限りまっせ!
サラーラ様は精霊院を卒業しやはって、
今年からオバルトの王都で生活してますねん。
念願の”拳の会”の正会員ですわ。
コブシ・ジェンヌとしてブイブイ言わすんやろな。
今年はアーミア様の結婚も控えてますねん。
ホンマは一昨年の筈でしてんけど、
大御所様がお亡くなりにならはって、
喪に服してましてん。
そらもうサーシア様の落ち込み様は、
はたで見とっても痛々しかったですわ。
しばらく寝込んでしまわはったくらいで。
お母ちゃんもえらい心配して、必死こいて
励ましてましたわ。
「気晴らしにバルドーの都でも爆撃しましょ!」
とか物騒な事いうてましたな。
敵国やったんは昔の話で、今はちゃいまっせ。
最近は笑顔にしてはりますけんど、
前と比べたらなんや線が細なったちゅうか、
問答無用のヤバさが無うなったちゅうか・・・
カダラの具合もあんまり良う無いみたいで、
ルルナ様が言うには腎が弱ってるて
話ですねん。
塩分を控えなアカンちゅうて
トキシラズ禁止令が発令されましてん。
サーシア様が泣くところなんて
初めて見ましたわ。
「あぁ~お願いよぉ~
私からトキシラズを取らないでぇ~
ルルナぁ~~~~~~」
「駄目です!もう若くは無いのですから、
食生活には気を付けないと!」
ルルナ様の言う通りですわな。
それでも、あんまり泣くもんやさかい
週に半切れだけやったら食べてもええ事に
なりましてん。
そらもう幸せそうな顔して食べはりますわ。
王都に在るこのお屋敷は、レイサン家の
本籍地ですねん。
サーシア様とカルアン様が結婚して興したんが
レイサン家の始まりやそうで。
カイエントのお城はアリーゼ様が将来
辺境伯を継いで治めるそうですわ。
そいでこのお屋敷はアーミア様が継いで、
結婚したらアーノルドはんと暮らしますねん。
一応、籍はターラム大公家に入るそうですわ。
ウチとサラーラ様は居候でんな。
「ト!ト!ト!トモッ!トモッ!
トモエちゃんでぇ~~~~~っす!」
「ていっ!」
「いっ痛ぁ~~~い、何すんのぉ~~~」
「普通に出て来んかいっ!」
こんなん連れてやってますねん・・・




