*第69話 涙の波動砲
聖女としての仕事は、まず朝のお祈り。
教会の祭壇で精霊に感謝を捧げる。
そして参拝者に”祝福の飴ちゃん”を配る。
参拝者は多額の寄付金をして参列を許された貴族や豪商たちだ。
昔から行われているが、聖女が出現し
手渡しで”飴ちゃん”が貰える様になってからは、
寄付金の額が倍増した。
ウハウハである!
費用対効果がハンパない!
教会の大切な収入源になっている。
そこのあなたっ!
今、悪どいとか思いませんでしたか?
物事を表面だけで見てはなりませんよ。
教会の事業は多岐に渡るのです。
ひとつは教育。
各地の教会では基礎的な学習はもちろん、
生活魔法の習得まで教えている。
平民は無料ですよ!タダですよ!タダ!
療養所も教会が運営している。
ここも平民は無料!タダですよ!タダ!
孤児院、養老院、職業安定所。
社会福祉的な事業は教会が担っている。
国は何をしているか?
国は国で様々に仕事をしている。
例えば軍事、例えばインフラ整備。
外交だって国の仕事だ。
唯、福祉が国家事業だと言う考えが無い。
それを教会が補っているのだ。
お金がいくらあっても足りないよぉ~ん。
思えば上手なやり方だ。
国が福祉をすると不平不満が湧き起こるが、
教会が行うとそれが不十分なものでも感謝されるのだ。
人の心の綾と言うものだろうか。
「教会の屋根を修理したいな。」
「教科書がボロボロだから新しくしたい!」
「戦争で孤児が増えた!」
そんな時には聖女様に来て貰って
”飴ちゃん”をバラ撒けば、ガッポガッポと寄付金が舞い込む。
世界中の教会から「ウチに来てお呉れやすぅ~」
と嘆願が寄せられている。
***
「ぐもらごにょへにょ!」
ムーランティス大陸の西側を統治しているドーモン王国。
そこの教会から招かれてサラアーミアが訪れていた。
「別に良いじゃないの。」
「ないの。」
双子がくっついて来た。
「それに貴方みたいな人見知りが一人でちゃんと出来るの?」
「の?」
「うぐ・・・」
「私達が居れば安心でしょう?」
「でしょう?」
「ふにゃふにゃらごにょ・・・」
空いた時間にデートでもしようかと、アーノルドも連れて来た。
「はっ!こんなの役に立たないわよ!」
「わよ!」
エルレイラの指さす先でアーノルドがモジモジしている。
「むにゃら・・・」
「せいぜい椅子よ!いえ椅子以下よ!背もたれが無いもの!」
「無いもの!」
「ひ、酷いなぁ~私だってやる時はやるよ~」
ドッカァ~~~ン!
バリバリバリ~~~!
ズドンッズドンッ!
ガガガガガァ~~~!
魔子の防御が無かったら命は無かった。
それ程に強力な攻撃だった。
「な!何なの?みんな無事?」
「私は大丈夫よ、レイラ!アーミアは?」
「みゃごみゃご!」
アーノルドは!
満足そうな顔で気絶していた・・・
「げろにゃご!うにゃげろ!」
なんだかんだ言いながらもアーノルドの事を結構お気に入りだ。
きっ!と空を見上げれば、太陽を背に四つの影が浮いているのを捉えた。
逆光で顔は見えない。
だがサラアーミアには分かってしまった。
「にゃろめ?」
若草の四姉妹だ。
「ごめんなさい。」
影の口元がそう動いたような気がした。
ズドドドドドドドドド~~~!
ドカンッ!ドカンッ!ドカンッ!
「いやぁ~これはキツイ~」
さすがの魔子も音をあげた。
格下であっても聖女の攻撃だ。
防御が破られそうになる。
「もう無理かも~」
「ふもごにょふにゃふにゃ・・・」
「そんな事を言ってる場合じゃ無いわよ!」
「こっちも攻撃しないと死ぬわよ!」
双子の言う通りだ!
この攻撃に対抗できるのはサラアーミアだけだ!
「ふうぅぅぅ~~~」
深呼吸をして精神を統一する。
迷いを断ち切るためだ。
カチッ!
スイッチが切り替わった。
エルサーシア直伝のサイコパスモードだ。
『波動砲発射用意!
エネルギー弁閉鎖!
エネルギー充填開始!
セイフティーロック解除!
ターゲットスコープオープン!
エネルギー充填70%!
80%!
90%!
100%!
エネルギー充填120%!
最終セイフティー解除!
波動砲!発射!』
ジュドォォォォォ~~~~~~~ン!
空に穴が開いた・・・
深淵の中に煌めく星が一瞬だけ見えた。
「何・・・今の・・・」
「・・・」
双子もあっけに取られてしまった。
「ふにゃごにゅら・・・」
例え一週間でも家族として過ごした、母にそっくりな姉妹たち・・・
「いやぁ、ギリギリで逃げたよぉ。
さすが聖女だけの事はあるねぇ~」
「うごみゃ・・・へにゃろ・・・」




