*第62話 免許皆伝
大広間にずらりと特級精霊が並ぶ。
久々の勢ぞろいだ。
その中心にはエルサーシアが何時になく真剣な表情で席に付いている。
その目には厳しさの中にも隠し切れない慈愛の光が揺蕩う。
相対しているのはリコアリーゼ。
レイサン家の長女である。
こちらもまた真剣勝負に挑む闘士の面持ちで構えている。
「これより”精霊の歌い手”認定試験を始めます。」
ルルナが開始を告げる。
「課題曲は、はしだのりひことクライマックスの”花嫁”です。」
「今日まで学んで来たことの集大成よ。貴方なら出来ると信じているわ。」
「はい!お母様!」
この日の為に用意した衣装は、真っ赤なカーネーションをイメージした、
フリフリのミニだ!
もちろん!ハイソの絶対領域!!
大きく息を吸い込み、目を閉じる。
ふぅ~っと静かに吐き出して、キッ!と前を見据える。
さぁ!歌うのだ!アリーゼ!
チャッチャ~♪
チャラチャラ♪
チャチャッチャ~ララ~♪
チャ~~~♪
チャラ~ラ~~~♪
『鼻~くそは~~~♪
指で~丸めて~~~♪
前歯~~~にぃ~~~♪
つけ~~~るぅの~~~♪
チャンチャン♪
チャカチャンチャンッ♪
あ~の~人の~~~♪
視線を~受~けて~~~♪
ニヤリ~~~と~~~♪
笑~う~の~~~♪
パァ~ン♪パパァ~ン♪
パパァ~~~ン♪
命っち♪か~けて~~~♪
萌~え~~~た~~~♪
癖っ♪が報~くわ~れ~る~~~♪
止~め~れない~~~♪
ドン引き~~~♪
されても~~~♪
むしろ~~~♪
ごほ~う~び~~~♪ 』
パァ~ン♪パパァ~ン♪
パパァ~~~ン♪
萌え尽きたぜ・・・
真っ白な灰にな・・・
ポッ!ポッ!と綿精霊が現れて
リコアリーゼを囲む。
祝福しているのだ。
早速に審査が始まった。
特級精霊たちが意見を戦わせている。
全てを出し尽くしたリコアリーゼは、
満たされた気持ちで真っ直ぐ母を見た。
エルサーシアも瞬きもせず娘を見つめる。
「審査結果を発表します!」
大広間に緊張が走る!
振動を止めた空気に鼓膜が痛い・・・
「リコアリーゼを”精霊の歌い手”と認めます。」
「おめでとうアリーゼ。」
「あぁ!お母様!私・・・私・・・」
娘に駆け寄り胸に抱きしめる母。
目に涙を浮かべながら寄り添う母より胸の大きな娘。
ちょっとイラッとする母・・・
「お姉様!おめでとう!」
「素敵な精霊歌でしたわ!お姉様!」
サラアーミアとアルサラーラも我が事の様に喜び泣いている。
エルサーシアの精霊歌。
その真髄は今ここに娘へと受け継がれた。
免許皆伝~~~ん!




