*第45話 えろはにほへと
甘い。
とにかく娘に甘い。
チクロより甘い。
「お母様ぁ~♪お願い~が~♪あ~るのぉ~~~♪」
「なぁに~♪サラ~ラ~~~♪」
この時点で既にOKである。
ルルナ日本語教室の生徒が3人になった。
とは言うものの、進捗状況が全く違うので、
同時に教えるのは効率が悪い。
そこで娘達が新入りの二人を受け持つ事になった。
エリーゼを担当するのはアルサラーラ。
ネフェルはリコアリーゼが教えていたが、サラアーミアに引き継がれた。
サラアーミアの場合は対人恐怖症を克服する目的も兼ねている。
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「今日は文章の読解力を養いましょう。」
「お願ぇするでねし。」
『国境の長いトンネルを抜けると二丁目であった。
夜の底がエロくなった。
扉の前に心が止まった。』
「はぁ・・・?」
「”夜の底”とは何を表しているの?
どうしてエロくなったの?
”扉”は何の比喩?」
「えぇっど・・・そんのぉ~」
「解らないのですか?」
「『二丁目』って何所だべが?」
「異世界に在る解放区ですよ。」
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「ふみゅ~もごもごむぐぅ。」
「え?申し訳ございません!聞こえませんでした!」
「ふみゅ~もごもごむぐぅ。」
「あ!発音ですね!分かりました!」
『むにゃもにょふにゅ
むにゃもにょふにゅ
むにゃむにゃもにょふにゅ
むにゃもにょふにゅ』
「え?え?え?本当に申し訳ございません!
聞こえませんでしたぁ~~~!」
「あぐあぐもふ~」
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「あぁ、可愛いエリーゼ。
今から『えろは』を教えるからしっかりと覚えてちょうだいね。」
「はぁい!サラーラ様!一言一句をこの胸に刻みつけますわ!」
『えろはにほへと
ちりちりのけを
そりてつるぺた
とほとしきかな』
「あぁ・・・なんと神秘的な響き。」
「これが『日本語』よ!」
「真の精霊言語・・・」
「そうよ!さぁ言ってみて!」
「イェロゥ~ファ~ニュエイドゥ~
ティリィティリィ~ノゥクェイウォウ-------」
「駄目駄目!もっとベタ~っと」
「イェロゥ~ファ~」
「伸ばしては駄目よ。『えろは』」
「イ、イェロゥ」
「『え』」
「イェ」
「『え・ろ・は』」
「イェィ・ルオゥ・ヒャァ」
この道~は~♪
い~つか来た~道~♪
あぁ~~~♪
そ~うだよ~ぉ~♪
だぁって~此~処~は~♪
君~の~♪
家~だもの~~~♪




