*第42話 青年よ大志を抱け!
相手が大聖女とは言え一国の王が、お茶会に呼び出されたとあっては
余りにも体裁が悪い。
そこで
<聖地巡礼のついでに立ち寄った>
と言う事にした。
王族でさえ滅多に許可の下りないモスクピルナスへの立ち入りが許された。
もちろんパンツ効果である。
「なかなか良いセンスをしているわね!」
フワフワのフリルに宝石染めが施されて、淡い色合いがエッロ~い!
聖地の祭壇で礼拝したとあれば子々孫々に渡り語り草となるだろう。
「棚からビタースイートマンボだな。」
セトルは気分が良かった。
「はい!腰に手を当ててぇ~。
右手は水平に上げて、そうそう。
視線は右手の先を見てぇ~。
いいよぉ~決まってるぅ~。」
「そ、そうであるか?」
”平凡の友”の取材を受けている。
平凡同好会が聖地への案内役を買って出たのだ。
実はファン倶楽部会員だったりする。
「そこでさっきの呪文を言ってみよ~かぁ!」
『ボーイズ・ビー・アニショタ~ス!』
「もう一回!」
『ボーイズ・ビー・アニショタ~ス!』
股間が光輝いている!
青年よ!大志君を抱けっ!
********
「貴方達はどうしたいの?」
クラスメイトであるミラームの事は、リコアリーゼも気には掛けている。
「私はネフェルを妃にしたい。」
「う、嬉しゅう御座います殿下!」
気持ちは分かった。
しかしそれが出来るほど世の中は甘くない。
身分の違いを乗り越える為には、
シオンが指名された様に特別な何かが必要だ。
そうシオンの様に。
「ネフェルを私にお預けなさいな。お母様には私がお願いしてあげるわ。」
放って置けない性格だ。
「かたじけない。」
エルサーシアの執務室を訪ねたリコアリーゼはミラームの一件を相談した。
「あら、そうなの?分かったわ。」
あっさり承知した。
エルサーシアが娘のお願いを断る訳が無い。
道理も常識も、可愛い娘のお願いに比べたら、取るに足らない些事である。
いざとなったら暴力で解決するだけだ。
大聖女の称号をもつ極道。
それがエルサーシアと言う人物だ。
ダモンの娘じゃきぃ!
なめとったらイカンぜよぉ!!
*********
カップを持つ手が震える・・・
落ち着け!
万が一にも傷をつけたりしたら殺される!
エルサーシアにパンツを送ると共に、ルルナが高級磁器に目が無いと聞き、
オバルト王国の一流工房”ロイヤル・テッペン・ハーゲン”に特注して、
ルルナを模ったフィギュリンを作らせた。
大いに気に入り上機嫌のルルナが自慢の茶器でもてなして呉れた。
もちろんロイペの特注一点ものだ。
勘弁してくれ~
金額の問題じゃねぇ~よぉ~
精霊王の愛藏品なんて触りたくないよぉ~
手汗が凄いよぉ~
滑るぅ~~~~~
事前に侍女のシモーヌから
「壊したら命の保証は出来ない。」
と言われていた。
何を飲んでいるのか?
味なんて分からない。
兎に角も一口だけでも飲めば失礼にはならない。
それさえクリアすれば、後は触れなければ良い。
がんばれ俺!
細心の注意を払ってセトルは茶の様なものを飲み、
カップをソーサーに戻す。
カチャリ・・・
やってしも~たぁ~!
置く瞬間に手汗で滑り、
強めに音を立ててしまった。
なんとか誤魔化せ!
「さ、さすが精霊王殿の御自慢の茶器ですな!
音の響きも素晴らしい!」
駄目か・・・
するとニッコリとルルナが微笑み
「そうでしょう?それが分かるなんて、貴方もなかなかね!」
そう言って自分のカップを指で軽くはじく。
ピィンッと繊細な音色を奏でる。
助かったぁ~~~
「さ、先ほどの話だが、あいわかった。」
早く帰りたい・・・
今後は薬物の製造は一切しない。
カヒ・ゲライスとは縁を切る。
大聖女がネフェルの後見人になる事を条件に、ミラームとの婚姻を認める。
全てを承諾した。
ミラームの立太子は取り消された。
いずれは王弟として臣籍降下し、大公位となるだろう。
二人にとってはその方が良い。
これにて一件落着!なのだろうか?
あの男はまだ生きている。




