*第41話 八犬士
ウルトラ遊撃隊は神出鬼没のゲリラ部隊だ。
先行調査隊の八犬士が標的を定め、
エルサーシアがゲートを開き、
転移と共に攻撃し速やかに撤収する。
ここはカーラン王国の山間にある農村。
どこもかしこも麻黄の畑だ。
一見のどかな風景だが正体は覚醒剤の原料畑だ。
坂道を下った所に大きな施設が建っている。
テロポンの精製工場だ。
ここを見つけたのは八犬士の一柱コブンゴ。
彼らは十二支精霊の十一番目、
戌のヤツフサの眷属である。
八犬士達は潜入調査のエキスパートだ。
孝のシノ
義のソウスケ
忠のドウセツ
信のゲンパチ
悌のコブンゴ
仁のシンベェ
智のケノ
礼のダイカク
ウルトラ遊撃隊の活動を支える影の立役者達だ。
「ご苦労様ねコブンゴ、良い子ね。」
リコアリーゼが頭を撫でてあげる。
「ワフッ!クゥ~ン」
「じゃぁ私達は畑を焼き払って来るわね。」
「工場は二人に任せたよ。」
そう言ってリコアリーゼ達は空へと舞い上がる。
すでに三か所の製造拠点を破壊しているが、
シオンとリョーマンは見学していた。
初めての攻撃魔法の実践だ!
緊張するぅ~~~
「ほら、練習の通りにやってみなさい。」
ルルナ教官と特訓した成果を見せる時だ。
「こ、こうだべが?」
人差し指をピンッと伸ばし親指を立て、残りの指はグッと握る。
指鉄砲の形である。
「そうそう!両手で構えて!さぁ!撃ちなさいっ!」
『私の思いを受け止めて!ズキュ~ン』
『俺のマグナムが火を吹くぜ!ドキュ~ン』
ドッゴォ~~~ン!!!
魔法弾には反動も発射音も無いが、
大気を切り裂く破裂音と、直後に着弾の衝撃音が響き渡る。
徹甲弾。
貫通力を重視した弾丸である。
「どんどん撃ちなさい!」
『ズキュ~ンドキュ~ン
ズキュ~ンドキュ~ン
ズキュ~ンドキュ~ン』
一目惚れ大発生の様になっているが、
工場は穴だらけで、壁も柱もボロボロだ。
屋根の重みを支えきれずに、ガラガラと崩れ落ちる。
「こっちも終わったわよ。」
麻黄畑に焼夷弾の雨を降らせて、
リコアリーゼ達が戻って来た。
辺り一面が火の海と化している。
強烈な火災旋風が巻き起こる。
「さぁ!次へ行くわよ!」
これで四か所目の破壊が完了した。
残りは三か所だ。
造作も無い。
*******
「カ!カヒは何所だ!」
カーラン王セトルは狼狽えていた。
半日だ!
半日でテロポンの製造拠点の全てが壊滅してしまった。
ついでと言わんばかりに鉱山の一つが爆撃されて崩れた。
地中貫通爆弾の餌食にされたのだ。
とんでもない破壊力だ。
あからさまな警告だった。
もうパニックだ!
これ程なのか!
これが聖女の力か!
分かってはいたものの、これまでは対岸の火事であった。
先の大戦にも参加はしていない。
高みの見物を決め込んでいたのだ。
いざ我が身に降りかかってみると、
天変地異に晒された心持である。
「ど、何所にも居りませぬ!」
「あ奴め!逃げおったか!」
朝方に大聖女から招待状が届いていた。
お茶会へのお誘いだ。
一国の王を呼びつけるなど無礼極まりない!
とその時は腹を立てたが、今ではすぐにでも飛んで行きたい気分だ。
<カヒ・ゲライス閣下も是非ご一緒に>
要するにカヒを差し出して詫びろと言う事だ。
しかし、肝心のカヒが居ない。
屋敷はもぬけの殻だった。
「如何致しまするか?」
「い、行くしかあるまい・・・」
面白半分で話に乗った事を後悔した。
どうすれば穏便に済ませられるだろうか?
聞いた話では大聖女は宝飾品には、まったく興味が無いそうだ。
「あくまで噂で御座いますが。」
「心当たりが有るなら申せ!」
「パンツを収集するのが趣味だと。」
「すぐに手配を致せ!特注で作らせよ!」
セトルの判断は大正解である。




