表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女エルサーシアの娘たち~あっちゃこっちゃで大騒ぎ!  作者: おじむ
第一部第一章 助けて!聖女様ぁ~
4/97

*第4話 振り向かないで

思わず言ってしまった言葉にこそ、本当の気持ちが溶け込んでいる。

心にもない事は意識しなければ走り出したりはしない。


次期村長として谷の将来を担う。

それがジャンゴの人生だ。

シオンと二人で歩く道の筈だった。


どちらかを諦める選択を迫られたその瞬間に呟いた言葉は、

シオンへの愛では無かった。


ずっと後悔をしている。

自分は卑怯者だと。

覚悟も無いくせに将来を誓った。


とぼとぼと帰り道を行く背中を見送りながら、

ほっとしてしまった自分が情けない。


せめてもの償いに彼女の支援者として精一杯の力になろう。

何時の日にか笑って話が出来る様に。


とりあえずは父親に直談判して

それなりの手切れ金を用意して貰おう。

谷に居辛いのなら他所で暮らせる様に手配をしよう。


それくらいはしないと気が済まないと、

ジャンゴは父親の部屋に向かった。

中からは話し声が聞こえる。

母親も居る様だ。


「んだども、あたら小娘さみついで男爵だべか?」

「んでねぇ、顔つぎん手土産だぁ。」

「公爵様が愛人だば、田舎の舞子が大出世じゃわいなぁ。」

「んだんだ、感謝すて欲すぐれだど。」


何だって?

貢ぐ?

愛人?

誰が?


シオンか!

シオンを公爵に差し出すつもりか!


「迎えさ何時来るだ?」

「来週来るだよ。」


大変だ!

どうする?

どうしたら良い?


説得が無駄である事は判っている。

父も母も欲に溺れている。


シオンに会わなければならない。


**********


長旅に備えて体力作りに励んだ。

目標が定まり心が安定したのか、食欲も湧いて気力も満ちて来た。

なんとしても聖女様に会って力を貸して貰えるようにお願いするのだ。


ジャンゴの事はもう諦めた。

けれど貴族の愛人はひどすぎる。

絶対に嫌だ!

それに村長の横暴から家族を守りたい。


出発は4日後の夜だが、旅支度も整えて今日にでも行けそうだ!

と思ったからなのかは分からないが、その夜に客人が訪れた。


オラだ!(ドンドン!)ジャンゴだ!(ドンドン!)開けてけろ!(ドンドン!)

演舞場の裏口を叩くジャンゴの声がする。


今頃なんだろう?

もう会いたくない・・・


開けてけろ!(ドンドン)大事な話さあるべな!(ドンドンドン!)


仕方が無い、嫌味の一つでも言ってやろうかしら?

シオンは裏口を開けた。


「大変だ!迎ぇの使者だば早よぅ着いだ!」

「え?」

「明日ここに来るだよ。」

「そったら・・・」


「おさどすてぇが?」

「聞いでどすがね?」

今更、気持ちを聞かれても困る。


「もす逃げるだば手伝うべさ。」

それを信じろと言うのか?

「2刻すたら来るがら決めれ。」

「わがた。」


答えはもう決まった。

大急ぎで準備をする。

両親に事情を説明して、別れの挨拶を済ませる。


達者たっしゃでなぁ。」

「んだす。」


「んだば、行ぐべさ。」

ジャンゴが荷馬車を用意して呉れた。

谷を出るまではジャンゴが手綱を取り、シオンは荷台に隠れて行く段取りだ。


話を聞けば数日前から準備していたそうだ。

食料も積んで有る。


追手が掛かるまでには3日ほどの猶予があるだろう。

その間に出来るだけ遠くまで進む。


谷を抜けて街道へ出た所でお別れだ。

一緒に連れて来た驢馬ろばに跨り、ジャンゴが銭入れを渡す。


餞別せんべつだぁ」

「ありがんど」

「達者でなぁ」


「んだす。」

挿絵(By みてみん)


御者台に座り手綱を握る。

ここからは前だけを向いて進む。

聖女様に会うのだ!

それまでは決して振り向かないとシオンは心に刻んだ。


餞別は金貨5枚入っていた。

「わいはぁ~こりゃ~すんげ~」


思わず振り返ってしまった・・・



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ