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大聖女エルサーシアの娘たち~あっちゃこっちゃで大騒ぎ!  作者: おじむ
第四章 堪忍すてけろ
35/97

*第35話 僕の家族なんだ!

絶えずモグモグと口が動いている。

いわゆる反芻はんすうと言うやつだ。


牛には四つの胃袋がある。

ミノ・ハチノス・センマイ・ギアラ。

胃と口とを何度も往復させて細かく砕いてから消化する。


シモフリは精霊だ。

十二支精霊の二番目。

うしである。


本来、精霊は食事をする必要が無い。

ルルナ達は普通に食事をするが、趣味で食べているだけだ。


シモフリもその気に成れば何でも食える。

それこそビーフステーキでも。

けれど、これまで食べ物を口にした事は無い。

まったく興味が無い。


なのに何故モグモグするのか?


それは牛である事に対するシモフリのこだわりだ。

猿がお尻をく様に。

鶏が首をカクカクしながら歩く様に。


牛はモグモグするものだとシモフリは考える。


**********


あれは牛よね・・・

どうしてこんな所に?


カーラン領事館の廊下でネフェルは立ち往生していた。

今日のミラームにきょうされる食事の確認を終えて、

調理場から戻る途中だった。

スケジュール帳を見ながら歩いていて、ふと気配に目を向けると牛がいた。


モグモグしているわね。

私を見ているわ。

つぶらな瞳が却って不気味ね。

何を考えているのかしら・・・


とにかく人を呼んだ方が良いと思いきびすを返すと、

虎が居た!


「ひっ!」

腰が抜けた~

抜けました~~~

挿絵(By みてみん)


「あ・・あ・・ひぃぃ」


声が出ない。

だって虎だもの。

物凄くでかい!


黄色と黒の縞模様しまもよう

燃えるような目。

ずらりと並んだ鋭い牙。


し、死ぬ!食い殺される!

まだ死にたく無い!

そうだ殿下!

殿下を逃がさないと!


「ダ・・・ダ・レ・カ・・・」

声が出ないよぉ~


ンンンモォ~~~(こいつがネフェルだな)

グルルルルルルル(さっさと連れて行こう)


そう!

この虎も精霊だ。

十二支精霊の三番目。

とらのハリマオちゃんだ。


ンンンンンン(お前が咥えて)モォ~~~(行ってくれよ)

ガオ~~~(わかった)


なんて大きい口だ・・・

私なんか丸呑みなんだろうな・・・

せめて噛まずに飲んで欲しいな・・・

駄目だろうな・・・

痛いだろうな・・・


あぁ・・・殿下・・・

どうか無事にお逃げ下さい・・・

私は・・・

私は・・・


ネフェルは気を失った。

その胴体をカプッとくわえてハリマオは

ひらりと向きを変える。


そして誰も居なくなった廊下には一通の置手紙。

宛先はミラーム王子。


差出人は、

エルサーシア・ダモン・レイサン・カイエント辺境伯夫人。


長い名前だ・・・


*****


<ネフェルは我々が捕らえた。

返して欲しくば3日以内にカイエント城へ一人で来るべし。

4日後の日の出と共に処刑する。>


「ど!どういう事だ!」

手紙を見たミラームは飛び上がった!


何故ネフェルが大聖女様に?

何か粗相そそうでもしたのだろうか?

いや!考えている暇など無い!


「大聖女様に面会を!」

慌てて総本山へ駆け込んだが、大聖女は留守だと言う。


大司教を訪ねて手紙を見せ、事情を聴いてみるが、

大聖女様のする事に教会は関与しないと、すげない返事であった。

実際には”しない”のでは無く、”出来ない”のだが。


「カ、カイエント城にまいろう。」

だが此処からでは通常は10日かかる。

魔法で高速移動しても5日。

3日以内に着く為には昼夜を通して駆け続けなければ間に合わない。


考えるな!走れ!


ミラームは魔法を発動した。

『ハヨカケール!』


急げ!急げ!急げ!

走れ!走れ!走れ!


ネフェルよ。

どうか無事でいておくれ。

其方そなたは・・・


「僕の家族なんだ!」



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