表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女エルサーシアの娘たち~あっちゃこっちゃで大騒ぎ!  作者: おじむ
第四章 堪忍すてけろ
31/97

*第31話 聖女の秘術

カーラン王国第三王子ミラーム。

国王セトルには五人の子が居る。

その末っ子だ。


性格は温厚で思慮深く、声を荒げた所などついぞ見たことが無い。

きらめく様な美貌と、優雅な仕草。

すれ違う者は皆が見惚みとれてしまう。


だが・・・


「ネフェルぅ~~~。僕って魅力ないのかなぁ~?」

侍女の膝枕でゴロゴロ甘える。

これが彼の素顔である。

優等生を演じるストレスをいやして貰うのだ。

挿絵(By みてみん)


「殿下は世界で一番に魅力的ですよ。」

ミラームを独り占めしている幸せを、

優しく頭を撫でながらネフェルは嚙みしめる。


「じゃぁなんで断るのさぁ~どうして良いのか分んないよぉ~」

国王からは引き続き努力せよとの指示が来ている。


「あの娘は頭が悪いのです。紅玉こうぎょくと石ころの区別も出来ないのですよ。」

殿下からの求婚をそでにするなど正気の沙汰では無い。


「馬鹿なの?」

「えぇ、馬鹿なのです。」

「そんなの妃にするなんてやだなぁ~

ネフェルだったら良かったのになぁ~」


あぁ!殿下!殿下!殿下!

嬉しゅう御座います!


「まぁ殿下、おたわむれを。」

殿下の立太子さえ叶えば・・・


「聖女の秘術が手に入れば

ネフェルが聖人に成れるんじゃないの?」


「さぁどうでしょうね。」

そんな事が出来るだろうか?

もしそうなら・・・


あの小娘など必要が無くなる。


どうすれば手に入る?

聞いたところで教えては呉れまい。

なにせ”秘術”なのだから。


あの小娘は大聖女の数少ない友人の娘だから、特別に教えて貰えるのだろう。


大聖女エルサーシア。

これまでに二度だけ対面した。

非礼を詫びに出向いた時と、呼び出されて求婚を断られた時だ。


思い出すと背筋が凍る。

我らを見る時の、あの無関心な目。

例え目の前で死にかけていても、平気で通り過ぎて行く目だ。


よくあんなのと友人に成れたものだ。


正攻法での入手は不可能だ。

やはり一族の力を借りる必要が有る。

ネフェルは本家に手紙を書いた。

”あの男”を派遣して欲しいと。


本家の当主、カヒ・ゲライスにて。


*********


精霊教総本山の大聖女執務室。

エルサーシアは御庭衆頭のマイクから、

カーラン王国に関する調査報告を受けていた。


「ゲライスが絵図を描いていましたのね。」


第一報でカーランの王宮にカヒが出入りしている事は聞いていた。

ミラームの求婚がそれと関係が有るのかを調べさせていたのだ。


「はい姫様、まず間違いないかと。」

王宮に潜入している者からの報告では、

ミラームから手紙が届くと、必ずカヒが執務室に呼ばれている。


「侍女のネフェルはゲライス一族の者に御座います。」

ゲライスとカーランの深い繋がりを表している。

「王宮勤めの者達の噂ですが、シオン殿をお妃に迎えれば、

ミラーム王子が王太子に指名されると。」


下働きの者達の噂話を馬鹿には出来ない。

王室の細々(こまごま)とした内情やら、

時には国家機密のたぐいまで流れる。


調理場や洗濯場までは統制が行き届かないのだ。

「ちょっと小耳に挟んだんだけどよ。」

「ねぇねぇ、あんた知ってる?」

それが会話の始まりの定番だ。


「意図は分かりまして?」

シオンを王室に取り込もうとするのは何故だ?


「確証はまだ掴めておりませんが、お嬢様方では無く、

わざわざシオン殿に目を付けるとなると、

恐らく”聖女の秘術”が目当てではないかと。」


「まぁ!無駄な事ですのに。」


そう、シオンを手に入れても無駄なのだ。

方法が解っても大した効力は無い。

精霊言語が流暢りゅうちょうに話せても、

それはただ外国語が堪能たんのうになるだけである。

精々が魔法の発動効率が上がる程度だ。


人型精霊との契約が可能な程に、精霊との親和性、

つまり精霊遺伝子を活性化させるには、

直接的に聖女か人型精霊から教練を受け、

波長を同期させなければならない。


圧倒的な影響力でもって、眠っている遺伝子を発現させるのだ。

ルルナ達の本体である観念世界ではそれを、

直達正観じきたつしょうかんの法”と呼んでいる。


「何やら色々と画策している様です。引き続き調査を致します。」

「えぇ、お願いね。」


「ではこれにて失礼いたします。」

報告を終えたマイクが退室する。


「はぁ~、厄介なお方ですわねぇ。

のんびりと余生をお過ごしになれば宜しいのに。」


「なかなかの執念深さですね。」

「ねぇルルナ。やっぱり殺してしまった方が手っ取り早いのではなくて?」

「もう少し道徳を身に着けましょうね。」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ