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大聖女エルサーシアの娘たち~あっちゃこっちゃで大騒ぎ!  作者: おじむ
第一部第一章 助けて!聖女様ぁ~
3/97

*第3話 七色の蝶々

この世界で手紙を届ける方法は二つ。

自分で郵便魔法を使う。

教会に依頼する。

通常はそのどちらかである。


郵便魔法は自分の契約精霊に依頼して

郵便を専門に請け負う精霊を呼び出して貰う。

高位の上級精霊の呼びかけでなければ応じて呉れない。


従って一般的には教会に依頼する事になる。


*********


この数日、シオンは部屋にこもり泣き続けている。

食事も喉を通らない。

辛うじて薄いスープを口にする程度である。

無理に食べさせても吐いてしまう。


本人も食べようとはするのだが、

体が受け付けて呉れない。

少女の存在は揺らぎ始めて、徐々に消え去ろうとしていた。


日毎にやつれて行く娘をなぐさめる事も出来ない。

何と言ってはげませば良いのか?

「愛人も悪く無いよ!」

などとは言える筈も無い。


このままでは本当に死んでしまう。

ケイコールは意を決した。

部屋の中でシオンは泣き疲れて寝ている。

起こすのは可哀そうだが大事な話が有る。


「シオンや、起ぎな、起ぎなへ。」

「か、かか様・・・」

「逃げるべさ、シオン。」


「逃げる?」

「んだ、オバルトさ行げ。」

「オバルトだべが?」


「聖女様に、エルサーシア様にお願ぇするべさ。」

「だども、そったら事すたら・・・」


この谷で村長に逆らったら暮らしては行けない。

他所の土地に縁者も居ない。


「後の事はえがら、我がの明日さ考げぇるべさ。」

「かか様・・・」

「まんず食ぇ、がへねだばまいね(体力が無いと駄目だよ)。」

「わがたちゃね。」


オバルト王国へ行くには陸路で約60日。

海路の方が早いが非常に高額であり、

金持ち相手の商売なので庶民は相手にされない。


陸路で行くにしても銀貨40枚は必要だ。

親子3人が半年は暮らせる大金である。


「街さ着いだら、売るべさ。」

ケイコールは小箱から髪留めを取り出す。

七色の宝玉が嵌め込まれた蝶々の形をしている。

挿絵(By みてみん)


「かか様!こでは!」

それは昔、エルサーシアから送られた友情の証。

母の宝物。


「おさの為に売るだ、エルサーシア様も許すて呉りょべさ。

んでこの手紙さ出すべな。」


エルサーシアに救援を乞う内容が書かれている手紙だ。

この谷にも教会は在るが、村長の息が掛かっているので

信用が出来ない。


季節は後陽も半ばを過ぎ、北国の短い夏が駆け足で逃げて行く。

旅立つのならば急がなければ途中で雪が道を塞ぐ。


「10日後の夜さ立つべな。」

「わがたす」


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