*第25話 Gの13番
連れて逃げてと娘は泣いた。
何も言わずに男は去った。
背中で泣いてる唐獅子牡丹。
今は寄り添い川の傍。
クリステルとケーンサンの霊廟は、
ヤンギーリ川の辺にひっそりと在る。
王族としての務めを果たしたクリステルと、
ただ一人を想い続けたケーンサンが、
人生の終末を共に過ごしたその名残である。
「曾祖母様、サーシアで御座います。今日は娘達も一緒ですのよ!」
他人の死に無関心なエルサーシアだが、身内となると話は別だ。
「リコアリーゼで御座います。」
「ごにょごにょ・・・。」
「アルサラーラですわ!」
「貴方もご挨拶なさいなシオン。」
「え、えっどオラぁシオンだべさぁ。」
「我が家の一員に成りましたの、可愛い子で御座いましょう?」
「私のお気に入りですのよ!」
アルサラーラが右腕に絡みつく。
「ごにょごにょふみゅ。」
左腕はサラアーミアが抱き着いている。
「叔父貴が逝っちまってもう10年ざんすねぇ。
ハイラムは平和ですけぇ安心するざんすよ。
これからも姉御と一緒に見守っていて欲しいざんす。」
クロビーにとってケーンサンは理想の男だった。
彼こそが任侠の人であった。
「サーシア、歌って欲しいざますわ!」
ヒバリーヌから精霊歌のリクエストだ。
「えぇ、良いわよ!」
「私も歌いたいですわ!お母様!」
「あぁ~♪私も~~~♪」
「ふにゃふにゃ~」
「みんなで歌いましょうね!」
「何を歌いますの?」
「”G”の13番でどうかしら?」
「まぁ!素敵!」
「それが良いですわ!お母様!」
「むにゃむにゃあむ~」
「決まりですわね!」
チャァ~~~ン♪
チャァ~~~ン♪
チャァ~~~ン♪
チャンチャンチャン♪
チャァ~~~ン♪
チャァ~~~ン♪
チャァ~~~ン♪
チャンチャンチャン♪
チャァ~~~ン♪
チャァ~~~ン♪
『面~目~な~い♪
面~目~な~い♪
ま~った~く♪
面~目~な~い♪
踏~まれ~た~♪
踏~まれ~た~♪
頭~踏~まれ~た~♪
土~下座~し~てる~♪
後~頭~部を~♪
踏~まれ~た~♪
浮~気~の~最中~に~♪
い~きな~り~妻~が~♪
訪~れた~♪
面~目~な~い♪
せ~め~て~♪
パ~ンツだけ~♪
履~か~せ~て~♪
履~~~か~~~♪
せ~~~て~~~♪』
チャッチャラァ~ン♪
チャッチャラァ~ン♪
「叔父貴も姉御も喜んでるざんす!」
きっと泣いていると思う・・・




