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大聖女エルサーシアの娘たち~あっちゃこっちゃで大騒ぎ!  作者: おじむ
第一部第一章 助けて!聖女様ぁ~
2/97

*第2話 取り憑かれた男

いくら食べても空腹で

どんな贅沢にも満たされず

手にしたものは価値を失う


最高級の衣装に身を包み

肥え太り

大勢にかしずかれていたとしても


真実の鏡はその者の干からびた

卑しい姿を映すだろう


かの命の有様ありさまを”餓鬼がき”と呼ぶ


**************


オバルト金貨200枚。

大層な金額である。

みやこで堂々たる屋敷が買えるほどだ。


ユバルが用意した支度金を前にして、

コイント貴族のトリオゴは更に欲が出た。


「これじゃぁまいねが(駄目だよ)、仲介もたんだでねぞ(簡単では無いぞ)。」

したはんで(ですから)、こりゃぁ手付てつけですだよ。」


やっぱりそう来たかとユバルは身構えた。

上乗せを要求されるのは予想していた。

だから準備していた額の半分を見せたのだ。


トリオゴは中央貴族の外交部に顔が利く、

オバルト王国に設置した花嫁募集の窓口から優先的に話を貰える。

但し、それなりの返礼を担当者にしなければならない。


んだばえがね(それなら良い)。」

「もう100枚だば用意すてらっせ。」

残りの100枚は用心して隠す。


「えがえが、すても話すさ聞いとるがの、

んどこせがれにゃ許婚さおっだべな。」

痛い所を突かれた。


調べられていたのかと少し焦る。

ちゃんちゃと(しっかりと)縁切りしたはんで(縁を切りましたから)。」


「そいじゃがの、舞姫が娘でねが?」

「んだす。」

「めんごい娘がや?」

「んだすな。」


にやりと笑ったトリオゴが身を乗り出す。

「さる公爵閣下と面識さあるべな、

がっぱし(かなりの)オナゴ好きじゃわいなぁ。

舞姫が娘だば大喜んびだべさ。」


公爵ならば男爵位の徐爵が出来る。

覚え目出度めでたくあれば夢が叶うかも知れない。


「お任せすてけろ。」


*********


シオンの母ケイコールは踊り子である。

夫は演舞場の支配人。

家族全員が観光で収入を得ている。


かつては小作農家であったが、地主の意向により農地は潰され、

その場所には宿屋が建っている。


地主でもある演舞場のオーナーは村長だ。

むごい仕打ちを受けても泣き寝入りをする他は無い。

ここで働く以外に生きるすべを知らないのだ。


「あ、あんまりだぁ~

オラえやだぁ~

貴族が愛人さなるくれぇなら死ぬべさ。」

挿絵(By みてみん)


こらえてけろ、ここを追い出されたら生ぎてげね。」


ユバルに呼び出された父エダンが戻り、悲痛な顔で告げたのは、

シオンを高位貴族の愛人に差し出せと言うものだった。


想い人に捨てられて、唯でさえ壊れそうな心にこれでもかと石を投げる。

人は何所まで残酷になれるのだろう?


あんだぁ(貴方は)、あが子さ(自分の子が)めごぐねが(愛しくないのか)?」

さっしねじゃ(うるさいぞ)!おめさ黙っちょれ!」


「とと様ぁ~堪忍かにすて呉りゃれ~」

「もう返事さすたでば、どもなんねべさ。」


涸れたと思っていた涙があふれ出す。

まるで命がこぼれる様に。


この涙が尽きる時、心も死んでしまえば良いのにとシオンは思った。

もう悲しむのは嫌だ・・・


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