*第11話 命の対価
ケイコール夫婦が逃れた先は、
テオルコイント首都モランの商家であった。
ジャンゴは低位の上級精霊契約者として首都の精霊院に入学していた。
その時の同級生が協力者だ。
ケイコールは売り子として、エダンは荷受け場の作業員として
働いていた。
大怪我をしてはいるが、シオンはダモンの保護下で
治療を受けていると聞いてケイコールは安堵した。
「どへば恩がえすべか解がんねすだぁ。」
助けを求めたものの自分達には何も無い。
たった一度きりの思い出があるだけだ。
それでもエルサーシアは友人だと言って呉れた。
それに縋った。
「私のサーシアを馬鹿にしないで下さいね。
友人に見返りを求めたりはしませんよ。」
にっこりと微笑んで嬉しそうなルルナである。
「サーシアが待っていますよ、一緒にダモンへ行きましょう。」
村長からはたっぷりと慰謝料を搾り取って来た。
ルルナが用意したのは、人が乗れるほどの大きな天秤量り。
その片方に村長を乗せ、同じ重さの金貨を要求した。
「もし釣り合わなければ、お前の体を削って合わせる。
順番に手足を切り落とす。」
と脅した。
ルルナはやると言ったらやる。
貯め込んでいた金貨だけでは足りず、
教会から借金をして漸く釣り合った。
金貨2000枚。
それが村長の命の値段だ。
「あれで優しいと思っているのかしら?」
「サーシアならとっくに殺してるよぉ~」
「・・・そうですわね。」
閉所恐怖症で馬車嫌いのリコアリーゼとハニーは
先に飛んで戻る事にした。
ルルナが魔法で馬車を加速させるので、通常よりも早く着くが、
それでも10日は掛かる。
とても耐えられない。
降り続く雪は当分の間は止みそうにもない。
上空を高速で飛行するのだから、並みの防寒具では役に立たないだろう。
「またあれを着るのね・・・」
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「ケイコちゃん!久し振りね!」
「エルサーシア様ぁ!」
ダモンの城で17年ぶりの再会をしたエルサーシアとケイコール。
互いの手を取り合い、過ぎ去った時間に思いを馳せる。
「ヨウコちゃんは息災かしら?」
「妹どば六年前ぇに・・・」
ケイコールの双子の妹、ヨウコールも踊り子であった。
17年前、谷の小さな音楽堂。
3人とルルナで”蝶々の舞”を踊った。
素朴な人達の輝く笑顔に囲まれて、スポットライトに照らされて。
元々、体の弱かったヨウコールは、大人になっても頻繁に熱を出していた。
六年前の冬に風邪を拗らせて肺炎を起こし、帰らぬ人となった。
「そうでしたの、淋しいですわね。あの音楽堂は、まだ在りまして?」
「んにゃ、観光用さ演舞場なったでばぁ。」
「そう・・・」
それならそれで良い。
思い出がより美しく映えるから。
「ねぇ、シオンを私に預けなさいな。」
「え?」
「アリーゼと一緒に精霊院に通わせるのよ!」
無茶を無茶とは思わないエルサーシアである。




