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99 突かれた裏側

 ハンガ国皇太子オレオンは非常に積極的に業務に取り組んだ。ガーナード国内の情勢を落ち着かせ、経済も滞る事なく回る様にする。日々、どこかからの視察要請や会議へと駆り出されては、空いた時間を使ってガーナード城へと呼び出したガーナード国の貴族達との謁見をする。

 それもこれもどうしても皇太子オレオンがあの聖女に会いたいがためで、ガーナード国側の貴族達が謁見の折には必ず何某かの聖女の情報をしつこく問われるという。


「…見つからない………」


 最初こそ素晴らしい聖女の存在を知り、大いにやる気に満ちていた皇太子オレオンだが、城内の近くに居りすぐに見つかると思っていた聖女が見つからないとあっては、日に日に焦りが見え始めている様子。これは必ずしも見つけなければならないわけでは無いし、今すぐに解決しなければならない問題でも無い。けれど、何かに取り憑かれた様に皇太子オレオンは探し続ける。


「獄中には居なかったと?確かか?聖女はそこであの者に力を使ったのではなかったか?他の者はどうだ?足取りは?帰って来た者達の足取りを逆に追ってみるのだ…!森の中で道を見失ったと?どこの森だ?広くて分からないだと!?では、もっと人を増やすのだ!足りなければ、ガーナードの者を使うといい!そうだ!ハンガからもっと騎士を呼べば良い!報奨金は如何だろうか?情報を王家が買うのだ!言い値を払うぞ!!」


 つい、側で見ている騎士達が皇太子妃サーランに進言しに来るほどには、周りの側近達にも何某かの危機感を匂わせていたのだろう。


「……殿下……何をなさりたいのです?」


 一日の業務が終わる頃を身計って、皇太子妃サーランが皇太子オレオンの寝室を尋ねれば、入浴後に既に酒を飲んでいたであろう皇太子オレオンがソファーに横になって眠っていた。側仕えの侍従が居たが寝台の支度をして皇太子オレオンを起こそうとしていたらしかった。


「………」


 皇太子オレオンの姿を見て深くため息をついている皇太子妃サーランの姿を確認すると、侍従は一礼をして寝室から出ていった。


 皇太子妃サーランはそっとブランケットを夫にかけてその隣に腰を下ろす。そしてそっとオレオンの髪を撫で付けた……


「……殿下、このままでは貴方がどうなるのか……不安でたまりませぬ……」


 ここに来てまさか自分の夫のこんな姿を見る事になるとは、ハンガ国にいる時には思いもしなかった。深ける夜の闇を窓の外に見つめている皇太子妃サーランの心も、その闇に吸い込まれそうになるかの様な不安で、揺れ動いている…




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