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96 市中の噂 3

「其方は聖女か?」


 他国の皇太子妃の前になど出た事は無いだろう。すっかりと緊張した面持ちで、ハンガ国皇太子妃サーランに礼を取るチェルシー伯爵令嬢に皇太子妃サーランが声を掛ける。


「さ、左様でございます。皇太子妃殿下。」


「まだ、幼く見えるが?」


「はい。私は15になったばかりでございます。」


「なるほど。して、其方はどんな力を持っておられるのか?」


「それは……」


 名指しされたにも関わらず、チェルシー伯爵令嬢からは何とも歯切れの悪い返事が返って来る。


「皇太子妃殿下…実際に目で見ていただきましたら、お分かりになるかと。」


 チェルシー伯爵令嬢を名指した紳士が、警護の騎士一名を手招きした。勿論、警護の為に立っていた騎士はハンガ国の騎士だ。


「御用でしょうか?」


 突然に呼ばれて騎士も驚いた事だろう。


「この聖女の言う通りになさい。」


「はっ」


「さ、チェルシー嬢。貴方の思う様にしてみるが良い。」


 皇太子妃サーランの言葉に、皇太子オレオンは身を乗り出してこの場を伺っている。


「では…失礼いたします、騎士様………」


 まだ幼さの残る白い手を、ゆっくりと背の高い騎士の顔近く迄チェルシー伯爵令嬢は挙げた。途端に、ガクン、と騎士は崩れ落ち、ドッとその場に倒れ伏してしまった。


「きゃぁ!」


「まぁ!」


「!?」


 所々から小さく悲鳴が上がる。


「おお!どうなったのだ!?」


 思わず、腰を浮かせての中腰で皇太子オレオンは叫ぶ。


「…恐るるに足りません…この者はただ眠りに入ったのです。」


 更に紳士は警護の騎士を手招きする。二、三人の騎士が駆けつけて倒れこんだ者を良く調べていく。


「…寝ている様で御座います………」


 信じられない事に、今は皇太子夫妻の警護中。本来ならばこの様な失態は罰則ものなのに、倒れ臥した騎士はスヤスヤと寝息を立てて気持ち良さげだ。


「私の力は、安らかな眠りに誘う事なのでございます。あの、騎士様をお起こしいたしますか?」


 チェルシー伯爵令嬢は寝入る騎士の様子を伺いつつ、おずおずと尋ねて来る。


「はははっ!これは良い!王族を前にして寝こける騎士など見たことがなかった!流石は聖女殿だ!」

  

 皇太子オレオンは大喜びである。


「誠に、聖女方のお力の素晴らしい事……目にできて幸せというものでしょう。聞きしに勝るお力ですわね?皇太子殿下。………その騎士は控えの間に連れて行っておあげなさい。ここでは恥をかくだけでしょう。」


 皇太子妃サーランの言葉と同時に数名の騎士に抱えられ寝入った騎士は退場していく。会場がザワザワとする中、皇太子妃サーランはそっと紳士に呟いた。


「望み通りの者でした。感謝します。」


 そして、皇太子オレオンに向き直る。


「素晴らしい体験が出来て夢の様でしたわ。さ、皇太子殿下、皆様と更なる親睦を深めましょう。」


 この皇太子妃サーランの言葉で、ざわつく会場にはファーストダンスの曲が流れ始めた。




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