92 ガーナード城開城 2
「騒がしくなりそうですわね…」
ガーナード王城…勿論ここに足を運んだことは無かった。ハンガ国皇太子妃として立たされる事になっても、ガーナード国は他国と小競り合いの続く間柄で、どの国とも行き来する様な友好関係では無かったから。
「なんだい?サーラン…この城が気に入らないのかい?」
ハンガから来たのは皇太子オレオンのみでは無かった。皇太子妃サーランもハンガ国王の命を受け今日、ガーナード国へと入城した。
「…いいえ。城は申し分ないでしょう。このガーナード国内の事ですわ。私達がここに住う事で国民に嫌な刺激を与えてしまうのではないかと…」
「あぁ、その可能性はあるね?けれど、僕達が聖女方と仲睦まじく過ごしていれば、それも杞憂に終わるのではないかな?」
「仲…睦まじく…ですか…?」
先日、皇太子オレオンの推薦でハンガ国に来た聖女は数十名に及んだ。その聖女方と仲良くした様にここ、ガーナード国でもするつもりならば、間違いなく反乱が起こりそうなもの………
皇太子オレオンは夫であり、傅かなくてはならない相手ではあるが、皇太子妃サーランにとって皇太子オレオンの存在が日に日に違和感を募らせるものとなっている。
優しいだけじゃ無いのはとうに分かってはいたが、流石にハンガ国に置ける聖女の関わり方は常軌に逸するものがあったと思う。
傷付けられた囚人を連れて来ては傷を癒してみよと突然に言われて、恐怖を覚えない令嬢はいないだろう。気丈な娘はその命に従った様だが、幼い者は泣くばかり…流石に皆が泣き叫び騒ぎになる前に皇太子妃サーランが止めに入ったのだが……まさか、ここ、ガーナード国内ではして下さるまいな………口に出して行動を慎むように進言すれば良いのか、ご機嫌のままに過ごさせて、ハンガ国の時の様に皇太子妃としてサーランが止めに入れば良いのか…
いや、両方だ…!躊躇は一瞬。皇太子妃サーランは行動に移す。
「お座りくださいませ…皇太子殿下。」
「なんだい?サーラン。あ、お茶かな?」
周りの侍女が速やかにお茶の用意をするのを横目で見つつ、ふぅっと小さく溜息を吐く…皇太子オレオンが席に着いたのを確認してから皇太子妃サーランは口を開いた。
「よろしいですか?皇太子殿下…ここは、勿論ハンガではありませんわ。祖国で許されていた事が、ここでは争いの種にもなりましょう。」
「勿論。分かっているよ?サーラン…」
「皇太子殿下がご興味を持っている、聖女方のお力の検証はこの国では禁忌と思し召しくださいませ!」




