91 ガーナード城開城
反乱が起きてより早数ヶ月。ガーナード国王城から王が消えてからそう遠くはない日に、閉ざされて許可された者しか入城を許されなかったガーナード国王城の城門が開かれる事になった。長らく王の不在も国の治安を揺るがす恐れありとの名目で、ハンガ国王の命の元にハンガ国皇太子オレオンがガーナード城入城を命じられたのだ。実質ガーナードの現政権は内乱の大元となったハドリー侯爵家とソルダム伯爵家に追随している貴族と、ハンガ国から入国している係官達が行ってきた。両国で権利を二分すると言う事で話はついていたのだが、指揮系統系の長点である王が居ないのは国として成り立たない。皇太子オレオンがガーナード国王代理、との名目で仮の王座に就く事になったのだ。
その為に今日、皇太子オレオンを迎え入れる為にガーナード王城の門は開けられたのだ。
「むぅぅぅ………わざわざ、敵を招き入れる事になるとは…!!」
ぎりごりと歯軋りさえも聞こえてきそうな悔しそうな形相で、白馬にまたがり堂々とガーナード王城に入城する皇太子オレオンを今にも睨み殺しそうに見つめながらエシャルン伯爵は低く唸る……
「堪えてくださいませ……!エシャルン様……!どうか…今しばらくですから…どうか…!」
新王代理を迎え入れる華々しい式典で、その新王代理に襲い掛かっていってしまいそうなエシャルン伯爵を部下の騎士は必死の形相で、ひっきりなしに宥めすかしては止めている。
エシャルン伯爵領はハンガ国に隣接している領地だ。反乱があったその敵国の動きをいち早く気付くべきであったのに気付く事が出来なかった。エシャルン伯爵が意気揚々と南のアノモラ国に睨みを効かせている隙に、王の首を取られ全ての事が終わっていたのである。自らの不甲斐なさと、悔しさと、王の無念に胸を打ち、入城が許されてから誰もいない王座の前で男泣きに泣いたと言う………エシャルン伯爵にとっては息子も同じ様な国王ルワンだ。小さく可愛い坊やが、逞しく、優秀で頼もしく国を引いていく姿を見るのがとても誇らしかった…
反乱直後の部下達は、報復を叫んだ!何があってもガーナードを明け渡すものかと、勇猛果敢なエシャルン伯爵に負けず劣らずと血気盛んで…が、これを止めたのは他でもないエシャルン伯爵だった。
将来有望な若い騎士達を犠牲にしてはならない。聖女に護られたガーナード国は再度立つ!!そう周囲の者達に言い聞かせて、その場に居た者全員を黙らせたのだ。その心の内では、いつか必ず王の無念を必ず晴らす、と深く、深く誓って…




