90 執拗な憧れ 3
「単刀直入にお聞きいたします。私達はどうなるのでしょう?」
午後のうららかなひと時に、ハンガ国皇太子妃が開くお茶会に招待されたのは昨日来国したガーナード国の聖女が三名。昨日は妙にご機嫌な皇太子の歓迎の言葉で押し切られ聞きたいことも聞けなかったのだ。今日ならば、出席者は皇太子妃と側妃のみ。悶々と考え事をするよりも、聞いてスッパリと覚悟を決めたい。そんな豪胆なご令嬢もいたものだ。
「どうにも、なりはしませんわ。ただ、ハンガ国で過ごしていただく様になるのでしょう。」
「では…国に、帰れないと?」
一人の令嬢の声が震える。
「ハンガ国には礼儀見習いと聞いてますの。失礼を承知でお聞きしますわ。私達に足りない礼儀とはなんなのでしょう?」
第二側妃ハウアラもカップを握る手に力が入る。
「芯の強さは素晴らしいものですわね…一つだけ、私から言える事は貴方方に危害を加える事はありえないと言うことですわね。まぁ鬱陶しい事があるかとも思いますけど、そこは少しだけ我慢なさって?」
「鬱陶しい事?何ですの?」
「皇太子殿下が……聖女の力を見たいとの事でしたの……」
どうしても声を大にして言う事ができなかった第二側妃ハウアラの声は消え入りそうだ。
「え?聖女の力をですか?」
実際ハンガには聖女の選定に必要な道具は無い。この聖女達の力がどの程度のものなのか、その種類は何かを目の前で示すことは出来ないだろう。それを知っているからこそ、昨晩第二側妃ハウアラの寝所へ皇太子はひょっこりと現れた。出来れば、聖女達を説得してその力を見せてくれないか、との事だった。第二側妃ハウアラとしてみれば複雑極まりないこの皇太子の願い…聖女達の扱いが悪いものにならない様に皇太子の要望を聞いた方が良いのは分かっている。が、彼女達がどう思うか………
「どうして?皇太子殿下が?」
「………以前より、ご興味がおありの様で…この度の機会を逃したくはないととても乗り気でいらして………」
「ハウアラ側妃様……」
ガーナード国から来た聖女達は困惑気味…それはそうだろう。聖女の力と言っても多種多様…気軽につかえるようなものもあれば、使う状況を作るには少しばかり憚られるものもある…だから彼女達は首を縦には振らない。
「皆様に協力して頂きたいと言うことでしたの………」
申し訳なさそうな、消え入りそうな第二側妃ハウアラの声…
「……」
「無理に、とは言えませんけれど…」
皇太子妃サーランも複雑そうな顔をしている。
「私達は、構いませんわ。多分……けれど、ハウアラ側妃様や他の方からしたら、心に傷を追ってしまうのではないかと………」
第二側妃ハウアラの聖女の力は傷を癒す事と意欲を高める事…癒す傷の程度も聖女毎の力によって変わっても来るのだから………




