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85 クトルドの焦り 2

 王から与えられた時間は今日中、だ。ギルダン将軍と共に謁見の間に入った部下達は、王の痴態よりも自らの地位と命を大切にする者達だった。

 詰所に戻ってくるなり、連れて来られていただろうハンガの使者に詰め寄って行く。


「ハンガの王は、いつガーナードに攻め入るおつもりか?また、そのお覚悟はあるのか?」

 

 以前ハンガ国王よりクトルド国王に持ちかけられた事は、共にガーナード国を揺さぶり弱らせてガーナード国を占拠し、()()()()しようというものだった。クトルド国王とて羽目を外し過ぎるところはあるが、知恵が無い訳ではない。やろうと言われて面白そうだからとそれだけの理由でハンガ国に助力したのでも無い。勝算があり、それに見合う価値を見出したからこの話に乗った。


「ギルダン将軍、お久しぶりに御座います。」


 恭しくかしずく使者にギルダン将軍は更に詰め寄る。


「将軍!落ち着かれませ!使者殿が驚かれてしまいます!」


 あまりの迫力さに周りの若い騎士が止めに入った。このハンガ国からの使者は文官なのか見るからに力弱そうで、多くの騎士を従えている将軍の片手で握りつぶせてしまうのでは無いかと思うくらいに華奢なのだ。


「本日は我がハンガ国王陛下から直接にクトルド国王陛下にお渡しする様にと書状が届いてございます。こちらを持参して参りました。」


「おお!!早く言わぬか!!さ、さ!誰か!陛下へお知らせを!」


 バンバンとハンガ国の使者の背中を叩きつつ、今までの焦りが嘘の様に笑顔を振りまくギルダン将軍に、半ば引きずられるようにしてハンガ国の使者は謁見の間へと連れて行かれる。


 先程退出したばかりの謁見の間には、まだクトルド国王は他の者と対談中だったのだが、これよりも急ぎは無いとばかりにギルダン将軍は室内にズカズカと入っていった。


「ほぅ?早いな?ギルダン将軍?」


「は!ハンガ国の使者殿をお連れしました。この者はハンガ国王より直接陛下へとお渡しする様に書状を携えております。」


 紹介されたハンガ国の使者はしずしずと進み出てクトルド国王の前に礼を取った。


「御目文字仕りまして恐縮にございます。クトルド国王陛下におかれましてはご健勝で何よりと、ハンガ国よりご挨拶申し上げます。」


「ふ~ん…面をあげよ…使者殿?」


「は。」


 クトルド国王に言われハンガ国の使者は面を上げた。


「ほぅ…して、書状とは?」


 使者の長い衣の胸元から、綺麗に封された一通の書状。ハンガ国の刻印がよく見える様に使者は丁寧に持ち上げてみせる。


「それをここへ!」


 クトルド国王の言葉に従い、ハンガ国の使者は動く。クトルド国王の視線はハンガ国の書状ではなく、使者の(かんばせ)に注がれている………










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