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83 絶望の底で

 あの方の為に、死者の中で私は生きる………

そう決意してから、どのくらいの時間が経って?


 ガーナード国地下処理場は反乱後も大きな変化は見られない。けれど、責任者が変わったのか時々信じられない様な残忍さをここにいる人々にぶつけてくる事がある。彼らにとってはここにいる人間は人間ではない。きっと家畜や何かだと思っている。愛玩動物ではなく、追い詰めて、追い詰めて狩られるそんな獲物の様に。


 まだ、以前は秩序があった様な気がする。自分を保とうとする何かが…仕事が終われば身を綺麗に清めようとする者がいたし、屋根のあるところで休みたいと、ボロボロの荒布を持って小屋で休んでいた。


 だが、どう?今、ここにいる人々は魂が完全に抜け出た屍みたいに、そこここでしゃがみ込んでいる。もう夜も深けているのに休もうと小屋へ向かう人すらいない。空な目を宙に向けたままの者もいるし、薄目を開けて寝てるのか起きているのか分からない様な者もいた。ただ、仕事が終わればそこに座って動かなくなる。生きる気力等彼らからは全く見て取れなかった。


 鬱々とした雰囲気と対照的に、地下処理場の上階にある部屋では賑やかだ。連日仕事の後には酒盛りが始まるらしい。ここで、食べ残しでも投げて貰えばどれだけのご馳走だろうか。骨の一本でも振ってはこないかと、最初のうちは皆天井の穴の下に集まったものだった。が、そんな自分達の姿さえ、上階の人々には良い酒の肴になっていた様で……投げられるのは空いたグラスや悪い時には酒瓶その物が誰かを狙い撃ちしてくる始末……


 地下処理場に落とされてくる荷物は反乱直後よりは落ち着いてきたものの、毎日毎日同じ様にガーナード国の国民達さえも落として来て…管理官に虐待されている人々がどんどん倒れていっては、新しい運び人が連れてこられて…彼らにとって一番最初にここの人々の惨状を見る事こそが恐怖だろう…一夜にして絶望に打ちひしがれてしまっている…


「…なん、人…?」


 霞む目と頭の中に、今まで何人に力を使ってきたかさえ、数えられないでいるフィスティアは一人、また草むらの上で横たわっている。痩せ細っていて、体力の予備力等残っていないその身体に、先日酒瓶を投げつけられてしまった。痛くて、苦しくてやっとの思いで地下処理場から外の草むらへと這ってきた…

 希望など、もう霞んで飛んで行ってしまったかの様に思う。このまま目を瞑ったら、体の痛みにも永遠と続く空腹からも解放されてはくれないか…何度か目に意識を手放した時、心から解放されたいと思ったのだ…せめてガーナード国の回帰を見てから、そうも思ったが、今の状況はそれさえも望めそうに無かったから。


「おは…や…く………」


 出来るだけ、早く…ルワン様………

また、同じ朝が来てしまう前に…早く………






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