81 セルンシト王子の告白 3
「ヒルシュ国のカンリール殿下で、ございますか?」
ガヤガヤと騒がしい店内で、何処からどう見ても高貴な王族にはみえない少年を前に、セルンシト国ケイトル第二王子は背筋をピンと張って挨拶をする。
「あぁ!やめやめ!ケイトル殿。ここではそんな堅苦しい態度だと浮きまくるよ?」
「う、浮きまくる、ですか?」
「そう、貴方も今後の事を話したいんだろ?なら、この場の雰囲気で。」
セルンシト国ケイトル第二王子も他国に長らく潜入し、密偵を務めてきた。だからこんな居酒屋には何度も来た事があるし、なんだったらもっと汚らしい場末の飲み屋にだって足を運ぶこともある。が、そこには王族などはいない。勿論、貴族に会うのだって稀であった。のにも関わらず、ヒルシュの力を貸そうと名を上げた末の王子が目の前に居る。いつもの様な居酒屋で酒と料理を楽しもうなどと言う気持ちさえ今はまだ吹き飛んでしまっていても致し方ない。
「しかし……」
ご無礼があっては……モゴモゴとまだ何か言いたげなセルンシト国ケイトル第二王子にヒルシュ国カンリール第四王子は手をフリフリしながらはっきりと言い切った。
「やめやめ!王族に対する礼がなってないのはこの場では僕の方だろう?だからケイトル殿も同じ様にしてくれなくちゃ!密偵としての注意事項忘れちゃったの?」
密偵、それは悪魔でも目立た無い様にその場に馴染み、必要な情報を得ること。それによく良く注意してみれば、周囲に此方に意識を向けている一見護衛騎士には見え無い者達がチラホラと。彼らは非常に上手くこの居酒屋の雰囲気に溶け込んでいた。目立た無いという所ではセルンシト国第二王子ケイトルは既に失格だろう。
「分かり、いや、分かった。なんとお呼びしたら?」
「ケイトル殿、この様に名前でいいよ?」
「了解した。カンリール殿。これで良いか?」
「そ、今はただのケイトルと、カンリールだからね?」
腹を決めたケイトルの態度は、些か崩れたものになり足を組んで姿勢を崩す。
「あ、やれば出来るじゃない?ケイトル殿?」
カンリールは満足いった表情になり、スッと書状を差し出す。
「これは?」
出されたものを受け取ってケイトルは中を改めながら、カンリールの話を聞いた。
「それは、じじ様がセルンシト側の要求を了解した、と言うもの。で、諜報作業は僕に権利を一時的に譲るって言う証拠。」
「ヒルシュ王が動いてくださるのか!有難い!」
「当たり前でしょ?僕も動くんだよ?じじ様が知ら無いとまずいでしょ?」
書状にはカンリールが言った様な事が書いてあり、ヒルシュ国王のサイン入り。
ヒルシュが動けば事態は大きく変わってくる!




