79 セルンシト王子の告白
「折り入ってお願いが御座います。」
セルンシト国王の寝室…休もうとしていた国王夫妻の前に来室者があった。
「まぁ、ケイトルどうしたのです?」
柔らかそうなナイトドレスを身に纏った王妃が両手を広げて息子を迎え入れた。数年ぶりの帰国の挨拶は先程の謁見の場で受けたのだが、プライベートな場所には成人してからというものなかなか足を運んでくれずに、ゆっくり話もできないでいたのだ。
王妃ダライナは喜びの表情を隠そうともせずにニコニコだ。
「ゆっくりしなさい。」
数年ぶりの父王は髪の毛の白い物が増え、少し頬がこけた様に感じる。
「お二人とも、お加減は如何でしょうか?」
数年も連絡らしい連絡もしてこなかった親不孝な第二王子。それが自分の立ち位置で……
「ああ、変わりないよ。お前はどうだったかね?」
いくら仕事のためとはいえ、きっと両親には心配をかけただろう。
ケイトルはセルンシト騎士団特殊部隊に所属している。王族であっても一騎士ならば能力を買われれば国外でだとて任務に着く。極秘任務にだったら極親しい者達にも仕事内容ですら明かす事は出来ない。
「はい…物凄く、貴重で重要だと思われる体験をいたしました。その事で、お二人にお話があります。」
「そんなに重要な事ならば、皇太子は如何する?」
「はい、後でこちらから伺っても良いですし、まずはお二人に話してから決めて頂こうと思っております。」
幼き頃は、兄王子を追いかけ回しては煙たがれるまで引っ付いていた弟王子は、年々逞しく凛々しく賢く育っていっている様だ…ホッとする一面、王族であるのにこの様なきつい環境で働かせてしまって済まないという親心にも駆られてしまう。
「さあ、お座りなさい。今、飲み物を用意させましょうね?ワインはいかが?」
「はい。頂きます……父上、いえ、国王陛下。何とぞ許して頂きたい事が御座います。」
侍女達が急いで飲み物の用意をしている中、しっかりと前を見据えてケイトル第二王子は話し出す。
「なんだね?改まって…父ではなく、王にかね?」
「そうです。」
「何かな?」
「ガーナード国に助力して頂きとうございます。」
セルンシト国王を見つめているエメラルドの瞳は、甘えっ子でキラキラと瞬く綺麗な瞳と言うだけではなく、真の強い決意を持った男の瞳だ。
「ほぅ?して、それは?」
セルンシト国王もただの親バカな王ではない。内乱が起きている国の手助けをしてくれと頼まれたとしても、勝算無くば断るだろう。
「それが無理ならば、私を国外へと追放してくださいませ。」
また、とんでも無いことを言う王子である。やっと帰ってきたかと思えば、内乱への助力か第二王子の国外追放………
「ふぅ……最初からゆっくりと話しなさい。ケイトル…」
「はい。では、まずは私は一度死にました。」




