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7 ハンガ国の要望 2

 ガーナードの国王は、宰相ディンクを通して正式にハンガ国の提案を拒否する旨を決定した。


「陛下……戦に、なるやも知れませぬ…」


 少々難しそうな顔をしているのはハンガ国の国境近くに自領を持つエシャルン伯爵だ。伯爵位を継いではいるものの、その実、実務のほぼ全てを国の軍部事に注ぎ込んでいるガーナード国の守りの要とも言える人物だ。

 一度戦が始まれば、小さなガーナード国にとってはひとたまりもないだろう。周辺国同士睨みを効かせているからこその和平だ。どこかが崩れれば、その隙に我こそは、と名乗りを上げた他国に攻め入られるかもしれないからこそ、どこの国も手を出せないのだ。 


「聖女の力が眉唾と言う割にはどの国もガーナードを取りに来ようとしますからね……ヒルシュとセルンシトは大丈夫だと思いたいですが…」


 今回の書類に目を走らせ、細かく確認しながら宰相ディンクは答える。


 北の国ヒルシュ国は皇太子ルワンの母、王妃の出身国で王妃は現ヒルシュ国国王の娘に当たる。南の国セルンシト国はガーナード国の貴族出身の令嬢がセルンシト王室に輿入れしている。この関係上二国は先陣切っては攻め入ってこないだろうとの考えだ。が、全てのしがらみを無視してしまえば、攻め入ってきてもおかしくはない。ガーナードをあわよくばと狙っている立場としてはどの国も同じだ。


「いずれにしても、父上。戦禍を避けるためだけに私だとて我が妃を見世物にするつもりは到底あり得ません。」


 父国王の目の前できっぱりと拒否の言葉を皇太子ルワンは伝える。国の為に仕える皇太子妃と言ってもフィスティアは自分の幼き頃から心を注いで来た大切な存在だ。そして、類い稀無い聖女の力を受け継いでいる。それを確認させろなどと他国の者が言って良い事でさえ無い。その場で無礼千万と突っ返しても良いくらいの問題だったが、それでは紛争を収めに出向いた意味がない為に、何も言わずにガーナードの面々はその場は引いたのだった。


「各国共我が国のガーナードの歴史を重じているからこその執着だろう。エシャルン伯爵我がガーナードも馬鹿ではない。戦になれば自国も無事では済まない事はどの国もわかっているだろうしな。」


 自国の国力を落とさずガーナードを取れないならば他国に対抗する事は出来なくなり、反対に国を取られる。それを考えれば、容易く侵略戦争などを仕掛けてくるはずが無い。ガーナード国王はその危険性を熟知していた。だが、水面下での小競り合いがいつまでも続いているのも見逃せないのもまた事実で…


「どうしたものか……」


 流石に集まった皆は渋い顔になって行く。


「ハンガ国は、聖女をお望みか?」


 ザワッ……その場にまた響めきが走る。


「陛下…!それでは……」


「全面的にこちらが機嫌取りをしているも同然ですぞ!」

 

 憤慨する臣下、それが良さそうだと仕方ないと納得する臣下、どちら着かずの臣下。それぞれの立場で皆意見を言い合う。ハンガ国が争いを収める為には聖女の力を示せ、それもきっとハンガ国には強い力を持つ聖女を寄越せと、直接的にでは無いにしてもガーナード国にそう圧力をかけて来ている事には違いなかった。

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