68 ガーナード国の状況 2
「え!?ジョルダン殿が、今ハンガに?」
「どう言うつもりで?」
皆混乱一色の中、一人カンリールだけがサッパリした顔でルワンに向き直る。
「ハウアラ妃はどうか分からないけど、ジョルダン殿は諦めきれなかったと言う事だよ。」
「単身、ハンガに向かった所で何ができる?」
「何がって?ジョルダン殿だって闇雲に突っ走っているわけじゃないよ?ルワン殿…今回の事が起こってから行動に移したんだ。僕は情報を分けただけ、少し手伝ったけど。」
「しかし、もしハンガで捕まりでもしたら…」
ハウアラ妃の奪還と言葉にしただけでも国を相手取っての大事だ。そんな事をヒルシュ国王もサリング侯爵家当主も許しはしないのでは?
「じじ様はこの件について知らないよ?」
然も当然とカンリールは言う。
「サリング家も覚悟はしている。ジョルダン殿の決意もね。もし、有事があって拘束された場合、サリング家はジョルダン殿を気狂いの為廃嫡したと発表するつもりさ…」
「……切り捨てると………?」
「それしかないだろう?ジョルダン殿は諦め切れない。かと言って一人の我儘のために戦争を仕掛けるわけにも行かない……ジョルダン殿もそれでいいと納得済みの所で、今回なんだ。」
今までだったら絶対に無理無謀な行動にも、ガーナード国奪還のために有志諸国が動くとあればハウアラ妃と接触し、かつ奪還のチャンスを伺う事も出来るかもしれない。ジョルダンはそれに賭けたのだ。
「意志の…強い方だな……」
「陛下…こちらも意思を堅めなければいけませぬ…此度の反乱には、騎士団長が…関わっております……!」
なんとも言いにくそうに下を向きつつも、一人の騎士ははっきりとそう告げた。
「私も、その事実を知り、刑に処された者の一人です。」
何人もの告発により、ガーナード国側の騎士団長と直近の騎士の裏切りがはっきりと浮き彫りになった。だから、あんなにもスムーズに事が進んだ……
騎士団長……騎士団長が……ルワンの脳裏にラートの顔が浮かんで来る。ルワンもラートも勿論他の騎士達も騎士団長とは知らぬ仲ではない…共に剣の腕を磨くために稽古をつけてもらった事もある……
「恥、知らずめが………!!」
何人もの騎士が唇を噛み、手を握り締めて悔しさに耐える。
「覚悟か……覚悟ならば、とうに出来ているはずだ…父王の死を見た時から…その覚悟は変わらない…皆、国を取り返すぞ………!」
そう、父王の惨たらしい死を見てから、心に決めた事がある。何としても何をしても父王を手にかけたものを許さないと…此度の反乱と同じ者の手引きならば尚のこと、ルワンのその決意は固まるのだった。




