64 ハンガの野望 3
「カンリール………お前の伯母上の事も関わっている。知っている事を全部言いなさい。」
「…じじ様だってこれ位の情報は持ってたでしょ?」
「お前ほどでは無い…さて、どうしたものか…」
「……名簿は…見れるか?移送される聖女の………」
ルワンの問いにカンリールは胸元から折り畳まれた紙の束を取り出した。
「ここにあるよ、ルワン殿。抜かりなく…でも安心して?王妃様の名前はないからさ…」
行方不明とされている王妃フィスティア……居場所ならばルワンが把握しているが、生きているのかどうかは定かではない…見つかっていないとするならば、生きている希望は薄いだろう……
「そうか…」
「王妃様は病床だったんでしょ?」
「………」
「見つかったって言うなら一番矢面に立たされるもんね。ここは、ルワン殿が何処かに隠しているのかな?」
「………」
ニッコリと微笑んでいるカンリールは何をどこまで知っているのか……
「下がりなさいカンリール…国には国の、家には家のやりようがある。今すべきなのは崩れ掛けたガーナード国を持ち堪えさせる事だ。」
それができなければガーナードを巡る数国間の戦が確実に起こる…
「ちぇっ分かってるよ、じじ様は硬いな…頭を柔らかくしなくちゃ情報戦に負けちゃうよ?」
「カンリール…!」
「はーい!分かりました!退散しますよ。では、ルワン殿またね!」
小さい体に特大級の嵐を背負ってきた様なカンリールは、来た時と同様に颯爽と去って行った。
「……王妃がまだ見つかっていない事は朗報だな……」
ガーナード国現王妃と言えば聖女の代表とも言える力に満ちているという…その噂は諸国を巡り知らぬ者はいないほどだ。もし、王妃があちらの手に落ちてしまえば、ガーナード国の聖女達は最も簡単に敵側に抱え込まれてしまう恐れもあった…
「…………」
「カンリールには困ったものだが、年若い恐れ知らずがした事と許して頂けると有難い…」
深々と溜息をつき頭を下げるヒルシュ国王の前で、ルワンは羨ましいとさえ思った。
「………まだ年若いでしょうに物怖じしない態度に諜報の能力には目を見張るものがあります。正直、素晴らしい人材と思えますよ?」
王族と言っても末の王子だ。継承権も無いばかりか貰える領地も多くはない。だから、自分の能力一つで生きていかなければならない事もある。王族や貴族であったとしても順風満帆とはいかない事もある。それを身をもって今体験しているルワンとしては、カンリールが持つ能力は非常に評価できる物だと理解していた。
「そうか……ガーナード国王にそう評価されるのであれば、あれも捨てたものではないという事だろうな……よし、決めた…!」
頭を下げていたヒルシュ国王はガバッと顔を上げると、サッパリとした顔つきでルワンに向き直る。
「あれを、其方に預けよう。ガーナード国王。」




