63 ハンガの野望 2
「……それで……?」
頭を抱えながらもヒルシュ国王は先を促す。
「そうだった!ハンガはさ、ガーナードと取って代わりたいんだよ。」
「我が国と……?」
「そう、今奴らが何をしていると思う?」
「………国の重鎮を押さえ込み、有無を言わさず好きに政策を打ち立てるのだろう…」
「そう、ま、その通りなんだけど、一つ違うのはさ、ガーナードを好きにしようとしているんじゃ無いんだよ…」
「ほう?それはまた面白いな…」
カンリールの話に頭を抱えていたヒルシュ国王も乗ってくる。
「ガーナードは聖女の国だろう?」
「そうだ。」
遥か昔から聖女が護り導かれた国。どれだけ誇りに傷をつけられようともこれだけは揺るがすことのできない唯一のもの。誰にも譲れない国の根幹だ。
「そこを突いてきてるよ…」
食べきったリンゴをポイッと後ろに放っては官吏間を慌てさせるカンリールはものすごい事を吐露した。
「奴ら、聖女をハンガ国に集約させるつもりだ…」
「は……何を言って……?」
「奴らは本気だ…だからヤバいんだ!もう第一陣で移送される聖女方の名簿も作成済みで、通達もされる頃だと思うよ?」
「その様な事をして、一体何になると………」
聖女はガーナード国に古くからある貴族達にその血が受け継げられてきていると言われている様に貴族の女子にしかその力は現れない。今いる聖女を連れて行ったところでガーナード国にははまだまだ貴族が残っている。だからそんな事をしても無駄なのだ、とルワンは言いたかった………言いたかったが、言葉が出てこない。
「そう……今ガーナードを支配しているのはハンガと少数のガーナード国貴族のみ。これから産まれるガーナードの子女を取り上げる事も、連れ去る事もハンガには容易い事…分かった?」
スゥッと自らの血の気が引いていくのをルワンは感じていた。聖女が産まれる国を聖女の国とするなら、ガーナードで聖女が産まれなくなればガーナードは聖女の国ではなくなる。ハンガはガーナード国の根幹から崩しにかかってきている…………
「ガーナード国を消滅させる為にか……………」
「勿論。反発している貴族もいる様だけど、逆らったらどうなるか?分かるでしょ?流石に金の卵を産み出すアヒルだもの処刑はされないかもしれないけど、貴族位を剥奪の上、一生奴隷の様な扱いだって受ける事も考えられる。」
ギリッ…ルワンの背後から手を強く握り締める音がする。騎士達もこの話は耐えかねぬと感情を顕にしていた。




