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62 ハンガ国の野望

「じじ様、奴らやばいね…」


 ヒルシュ国王の執務室にリンゴを齧りながら入って来たのは濃茶の髪に鳶色の瞳の王の血を濃く受け継いだ一人の若者だ。若者というより未だ少年の域では無かろうか?


「また、そんな格好で……」


 じじ様と呼ばれたのは勿論ヒルシュ国王。この少年を見るとやれやれとため息をつく。


「お客様の前だぞ?カンリール…」


 ため息をついたヒルシュ国王はそのまま頭を抱えている。


「ん?知ってるよ?でも従兄弟殿だろう?ならば親戚じゃん?」


 ヒルシュ国王の前に座り今後の方針を立てていたルワンと騎士一行は一瞬呆気に取られた。


「カンリール様……従兄弟殿と言えども、彼方はガーナード国王陛下であられます。」


 側にいた官吏間がすぐ様訂正を入れてくれた。


「それも知っている。けれど、今は国を追われているのだろう?なら、王の沽券なんて地に落ちているも同じだろ?それよりも人柄だ。」


「カンリール…!」


 ヒルシュ国王はほとほと困った表情になる。すっかりとヤンチャ坊主に手を焼く親の図だ。


「…なる程…確かに私の王の沽券は地に落ちているな……お初にお目にかかる。カンリール殿?私はこんな形でもガーナード国国王ルワンだ。まだ国を開け渡したわけでは無いから、国王と名乗らせてもらおう。」


 立ち上がって、ルワンは礼を取った。


「いいよ…礼儀作法なんて。国王にそんな事されたら後でこっ酷くじじ様に叱られるだけだし。それよりルワン殿、良い目をしている…まだ、諦めては無いね?」


 シャクシャクとリンゴを咀嚼しながら、王族としてはかなりの破天荒ぶりをこれでもか、とカンリールは周囲に見せつける。


「許せ、ルワン。最後の孫と甘やかしたのが悪かった……人を見る目は良いのだがな…」


「お!じじ様に褒められた!珍しいな!気分が良いからとっておきのを教えてあげるよ!」


 ドカッとヒルシュ国王の横に腰を下ろしたカンリールはやはりまだまだ幼さが残る。

 

 ヒルシュ国王の息子に当たるタントル皇太子の末の息子。最後の孫で目一杯甘やかされて育ったのが目に見えてわかるほどカンリールは伸び伸びとしていた。


「で、どうしたと言うのだ…?何か分かったのか?」


 客人がいることが分かっててわざわざ入ってきたのだから、きっとガーナード国に関する事をカンリールは言いに来たのだろう。


「先程、何がやばいと?」


 そこはルワンも気が付いていたようで、少し身を乗り出す様に体制を変える。


「それなんだけど、ルワン殿、僕の趣味は諜報で各国に目と耳を放ってるんだ。勿論ガーナードにもだし…僕自身も行くことがある。」


「…………」


 ここまで正々堂々と他国の王に対し、諜報を行ってます、と宣言する者はいないだろう。カンリールは何も気にしていないのか無邪気に言い放った。


「あ、これは悪魔でも趣味だからね?他国に不利な情報はじじ様にだって流していないし、他でどうこう利用しようとも思ってないよ?」


 その言葉を聞き、ヒルシュ国王はまたもや頭を抱えるのだった……










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