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58 聖女と死者 2

「その者は…?」


「この方は聖女殿にございます。ここにいる我ら一同、この方に命を吹き返して頂きました。」


「其方ら全てが?」


「…陛下の前に出る事も恥ずかしながら………あのままでは森の奥に埋められる所でございました。」


「そうか……では、情けない事に私も同じだったのだな……口惜しいが、拘束されてからそう時間が経たぬうちに処刑された……娘!顔を上げよ…」


「恐れながら…どうか、このままで………」


 王が処刑されたなどと聞いているだけでもフィスティアには身震いがしてくる…フルフルと震えてしまっている姿を見て王ルワンはそれ以上を求めなかった。


「其方が聖女ならばどうしてこんな所にいる?」

 

 心無しか王ルワンの声が柔らかい…?


「不思議な事でございます。聖女殿でありましたら城で保護されていてもおかしくはないでしょうに…」


「さぁ…私にも…どうしてかは……」


 まさか目の前の王ルワンに放り込まれたとは、本人を前にしては言うことができない。




 気が付いていない……?




「もしや、罪人の娘では…?」


「そうかも知れませぬ。貴族の罪人からでしたら聖女殿が産まれてもおかしくは有りますまい。」


 どうやら王ルワンと周りの騎士達は目の前にいる見窄らしい女が王妃フィスティアとは気付いていないようだ。それも当たり前かも知れない。王妃を語るに代表となる様な輝くばかりの金の髪は泥と埃、垢と先程自分でも流した血で汚れ、くすんで焦げ茶にも近い色になっている。金の瞳は顔を上げ、力を使わなければきっとフィスティアとは分からないだろう。細く痩せ細ってしまった肢体や身体は以前のフィスティアとは似て非なる者。王妃とは結び付ける所がない程に今は変わってしまっている。


 しかし少しでもここ地下処理場の惨状を騎士や王が知っていたら、子供を産んで育てて行ける環境でない事が分かっていたろうが、他国との鬩ぎ合いが続いていたルワン王の治世では細々とした所まで目を行き渡らせる事は難しかったに違いない。


 だから分からなくて当然で、フィスティアにとっては都合が良かった事なのだ。王ルワンの親友で片腕でもあった騎士ラートを助けられず王ルワンの心をこれでもかと言うほどに傷つけたのだから…あの時の言葉を思い出すだけで、全てを後悔したくなる。自分がここにいる事にまだ生きている事に、産まれてきてしまった事に………


「私には、分かりませぬ……」


「致し方ない…其方自身が生まれを決められるものではないからな。」


 王ルワンは先程直ぐに処刑されたと言っていた。ならば体力は問題ないだろう。フィスティアの力は命を吹き返し、その身体の傷を全て癒す。体力も十分な今、その身の安全のために王ルワンには国外にでも逃げて欲しかった。


「……どうか、どうかお逃げ下さい………」


 フィスティアが持てる限りの小さな宝石が入った布袋をそっと王ルワンに差し出した。


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