52 揺れるガーナード 2
「くそっ!なんて事だ!どこのどいつだこんな馬鹿げた事しやがるのは!こりゃ、近衞騎士の制服じゃねぇか…こんな所に埋めちまったら、後から身内の報復が来るぞ!何考えてやがる!」
ザッカルはさも忌々しげに舌打ちまでして今後の自分の身を案じてブツブツと何やら独りごちている。
勿論…フィスティアもこの騎士の制服を見た事がある…近衞騎士は王族の身辺を警護する任に当たっているのだから、この中に顔見知りだっているはずだ…
「なんて…事に……?」
人の死体などもう見飽きた程見てきたのに、初めて見る者の様に恐る恐るとしか目が向けられない…あの人か?あの人が…?と、後から後から思い出が浮かんで来て足が動かなくなってしまった。この間にも後から後から荷は落ちて来るのだ。
「チィ………ッどういうこった!?騎士様なんぞ埋められねぇよ!家に引き取ってもらってくれ!」
ザッカルが上に向かって叫び声を上げる。まだ上の階では何やらゴタゴタが続いているらしい…ザッカルはかなりがなり立てて怒鳴っているのにこちらの事などお構いなしの様だ。
ドシャ………
そんな時に新しい死体が投げ込まれる。それは先程反乱が起きたと上から教えてくれた役人だった……投げ込まれるのは死体だけ…その男の肌はまだ生き生きとして温かそうだった…
「ヒィ……!」
見慣れたのは死者と分かる死体のみ…今正に死して直ぐの人間など………
悲鳴が上がり顔を背ける者もいる。
「おい!ここはガーナード国の死体処理場だろう?何をさぼっている?職務を全うしない者はいらないな?後で猛獣を投げ込むとしよう…」
上から降ってくる絶体的な絶望の言葉……猛獣など入れられては生残る希望も無くなるだろう…
「な…何をしてやがる!!!とっとと片付けねぇか!!!」
掌を返したザッカルが鞭を振り下ろして荷運び人を急き立てた。中には直接鞭打たれた者もいて、それはただでさえ弱っている人々に追い討ちをかける羽目になった。
荷車に泣きながら死体を積む者…よろけながらそれを押し森の中へと運んで行く……いつもの地獄が更なる地獄を背負って荷運び人に覆いかぶさる…
なんとか……しなければ………
何をどうすれば良いのかなんて最早フィスティアにも考えつかない…けれど、ここに近衛がいる。先程の者は城内を制圧したと言っていた。ならば、王は?王ルワンは?彼は何処に?捕まって牢にでも入れられたのだろうか?生きているのだろうか?
誰もが無言で自分の息遣いと、荷車を押していく音だけが辺りに響いていた…




