50 セルンシトの騎士の求婚
「どういう事です?」
生き返ったセルンシト国の騎士から衝撃的な事実を聞かされ、投げかけられた言葉の理解にフィスティアは追いつかない。
「貴方様は聖女でございましょう?立ち振る舞いから身分も悪くないとお見受けいたしました。その様なレディにこの場所は一番相応しくはないでしょう…今ならば見張りは少ないでしょうね?私ならば貴方お一人くらいならお連れする事ができるでしょう。」
久方ぶりにレディと呼んでくれる者に出会ってフィスティアは新鮮な驚きを覚えていた。今の自分は最早レディの欠片も、見る影もないのに……髪はボサボサ、肌もガサガサ手足はあかぎれて黒ずんできているし服も肌もあらゆる汚れに塗れている……そんなフィスティアに恭しく手を差し伸べているこの騎士の方がどうかしてしまったのではないかと心配になる。
「女性一人で国外に出る事は難しいでしょうから…どうでしょう?私と夫婦と見せかけて共に行くのは?」
じっと騎士の手を見つめながらフィスティアは静かに首を振った。まさか、今のフィスティアを見て求婚してくる者が居るとは………
「知らぬ者にこの様に言われて怪しむのもよく分かります。が、貴方様をお守りする為とご理解ください。」
「私は……ここから出て行きません。」
「何故です?レディ?」
フィスティアはここに居るべきでは無い身分のはず…この聖女の力を見てもはっきりとそれが分かるのに……
「ここで、私に出来る事があるからです。」
「この死体廃棄場でですか?」
騎士の瞳は驚いた様に開かれた。
「お許し下さいませ、セルンシト国の騎士様。ここだから、ですわ…貴方の様な方も来ます。我が国の民もきます。罪なく罰せられた者達も来るのです。不甲斐なかった私に出来る事はここでだけなのですもの。離れるなんて、出来ませんわ…」
きっとフィスティアがここから居なくなったとしても王ルワンには伝わらないだろう。フィスティアの生死すら最早どうでもいいことになっているに違いなかった。ここを離れてしまってはあの時の様に王ルワンに対しては罪滅ぼしも謝罪すら出来ずにただ自分の保身のために逃げ出す事に他ならなくなる。
「それでも…貴方様が生きている事の方が重要ですよ、レディ。こんな素晴らしい力ある方がこんな扱いを受けるべきではありません。ガーナード国王は思慮深い賢王のお血筋だと思っていたのですが、どうやら違った様ですね…?」
「違うのです…!王はルワン様はなんら悪くはありません!何も非を受けるべき処などなどありません…ここに残るのは、私の願いでもあるのです…だから、どうか…早くお逃げ下さい………!」
その通り、フィスティアが自分の力を知りあの時の扱えていたら、王ルワンもフィスティアをここには捨て去らなかったのだから……




