42 フィスティアの力 2
昨日まで死にそうで地べたを這いずっていた者がスタスタと歩き出すのは些か不自然だろう…フィスティアはなるべくゆっくり、ふらつきながら朝早く食事を取りに行った。もう死にそうなフィスティアがまた地下処理場に現れた事にザッカルは少し驚いたようだが、まだ死んでなかったか…の一言でフィスティアからは興味が失せた様だった。ザッカルは今日の仕事を滞りなくここにいる者達にやらせることができればそれでいい、そんな男だった。
フィスティアは手にした食料を持ってそれを他の者に取られない内に少年のところに持って行く。フィスティアと同じ様に徐々に少年も衰弱して来ていた。
フィスティアは何度も何度も願ってみた。この少年や、病気の者の病や怪我が治る様にと…しかし、それのどれもが叶わない。日々衰え、衰弱して行く少年を見つつ自分が先に倒れてしまって、そして自分だけが癒された……
「ほら……食べなさい…!よく噛んで…!食べなきゃ…!」
硬いパンをちぎっては水で柔らかくして食べさせて行く。幸いな事にまだ少年は食べる気力はある様だ。フィスティアが口元に持っていった食べ物はゆっくりだが全て食べてくれた。
私にしか効かない…………
どれだけ願っても、祈っても少年の状態は自分の時の様に良くはならないし力も動かないのだから。
なんて言う意味の無い力なの……自分しか助けられないなんて…
これでは王ルワンに捨てられても仕方無いとさえ思える。
朝食が終われば今日も一日同じ繰り返しだ。ノロノロと動き出す者達に併せて荷車を取りに行く。今日は何時もよりも荷物が多い様だ。既に何台かの荷車にはこれでもかと死体が積まれていた。
「おい!早く押して行け!」
既に積まれた荷車をどんどん運んで行けと朝からザッカルが叫んでいる。手前にある荷車を押してなんとか部屋から外に出る。少年も何とか立ち上がって荷車を押した。休ませる事も代わってやる事もできずにただ毎日同じ事の繰り返し…
ゆっくりゆっくり、力ない少年に併せて荷車は進む。穴掘り人が掘る穴は広大な敷地にいくつもあり、途中の道は足場が悪い所もあって力ない者にはそこまで行くことさえ厳しいものがあった。そして今日は沢山積まれた荷物の所為で何時もよりも荷車の制御が難しい…
ガタンッ!!
大きめの石に乗り上げた際、荷車の車輪が石から滑り落ち振動で跳ね上がった遺体が森側へとずり落ちてしまった。
「あっ………」
身体の大きな一見騎士と思われるその身体をもう一度担ぎ上げなければならないと思うと、一気に気分が沈んで行く…………
ふと、その死体に目を向けた少年の表情が一気に変わる……




