41 フィスティアの力
何人もの者が病気になって行く…粗末な食事に綺麗な水も無いここではそれが当たり前のことで、死んでもいい様な者達がここで仕事をしているのだから健康を害しても誰も気にもとめない…
ここでは食物が圧倒的に少いのに野草や野生の動物を狩る事は禁止されていた。かつて毒草を食べたり、ネズミを食べて病気になる者が多発して働く者達がいなくなると言う非常事態に陥ったことがあるからだ。その様な時はここの監視人や役人、騎士までもがこの仕事に駆り出される事になる。こんな事は誰しも真っ平御免なのだ。だからここに来た者達を生かさず殺さず出来るだけ長く使おうとする。それはジワジワと力を削いでここにいる者をゆっくりと死に向かわせて行く事と同じだった。
当然、フィスティアも同じ道を辿る事になる。体調を崩した身体には溜められて汚れた雨水は追い討ちをかけた。まだ要領よく食物を手にしていた少年に比べフィスティアの方が衰弱は速かった。動けなくなっても助けはなく、気温が下がって来る外にいたフィスティアの体温はさらに奪われる。冷えた手足が痺れて動けなくなって、遂にフィスティアは死を覚悟した…
死にたくない……死にたくは……
もう一度……ルワン様に会いたい…
生きて……会いたい………
目を瞑って心の中で強く思う……あんなに酷く拒絶され怒りをぶつけられたと言うのに、死を目の前にして思い出すのはかつての王ルワンの笑顔だ。
優しく、暖かく、包み込む様な王ルワンの笑顔や優しい手に胸が焦がれて仕方がなかった………
…………軽い……?
胸に湧いてくる恋慕の他に、腹の底で熱く動くものがあって…………フッと身体が軽くなる……目を開ければ異様に視界もハッキリとしていて、痛むところも無い……
知っている…この腹の底で動く感じは……!
初めて自分の体に聖女の力を使った時、あの時は小さな手の切り傷だった。つい、痛みに耐えられず早くこの傷を治したいとフィスティアは思った。その瞬間自分の中で動く力を感じた。その時と同じもの…懐かしくもあの時使えなかった不完全な力……
「治ってる……?」
フィスティアはゆっくり地べたから起き上がる。もう目眩も起きないしそれよりも逆に力が湧いて来さえする。
「生きてる……」
寒さは感じるし、空腹もある。痩せ細った手足は変わらないけれど、身体に感じていた不調は全て消えていた……確かに自分の中で働いたのは聖女の力だ。フィスティアの力は衰えたわけでも無くなった訳でもなかった…




